こうした海外への拡散で、大手メディアだけでなく、一般人からも謝罪会見への戸惑いが溢れている。
「ニュースを見たわ! OMG(オー・マイ・ゴッド)。マジでアナタたち、ちゃんとしたほうがいいわよ」
そう筆者にメールを送ってきたのは、イギリス人女性(33歳)。こちらが説明するまでもなく、すでに報道を目にしていた外国人は少なくなかった。
「
最初はジョーク・サイトのニュースかと思った。ノルウェーには30分しかお昼休みはないけど、3分早いなんてとこまで気にしないわ。日本に比べてお店が少ないから、だいたい社内のカフェテリアですませるけど、ちょっと時間をすぎたり、早く職場を出ても怒られることなんてまずない。こんなことで謝罪会見を開くのは世界でも日本だけだと思う」(ノルウェー人・女性・33歳)
昨年11月にも、定刻より20秒早く列車が出発したことで首都圏新都市鉄道が謝罪したが、起きた出来事そのものよりも、やはり謝罪会見が行われるということのほうが衝撃的なようだ。
「日本人じゃないから言えた義理はないけど、ときどきクソみたいな国だと感じるよ。(こういった謝罪会見を報じる)どの記事にも自殺防止ラインの電話番号を載せたほうがいいんじゃない? とても変だけど、ある意味“日本的”な出来事だと思う。これだけ海外でも話題になって、働いている人間も、経営者側も、国全体にも世界レベルで恥を塗っているだろう? これで神戸のおじさんが、3分早く休みをとったってことは世界中に知れ渡ったけど、福島の原発が今どうなっているかは全然伝えられない。すごく偽善的だと思うよ。
こんな会見は開くくせに、政治家や大企業の重役はやりたい放題じゃないか。いきなり世界中で“有名人”になって、おじさんも可哀想だよ」(アメリカ人・男性・37歳)
日本国内でも、
ほかに透明にするべきこと、報道するべきことがあるのではないかという意見は多い。先述の高度プロフェッショナル制度など、働く人間にとって考えなければならない問題は山積みだが、国会ではろくに審議もされないまま強行採決されているのが現状だ。そういったなか、今回の中抜けが大々的に会見を開いてまで謝る内容だとはとても思えない。
また、一部には「公務員であるから」という理由で謝罪会見を擁護する意見もあるが、そこに対しても海外からの視線は冷たい。
「公務員だろうが、なんだろうが、労働者であることには変わらないでしょ。一般企業でも何か不正をしたら、謝罪して罰を受けるべきだし、今回の件については誰がどう見たっておかしいよ。だいたい、それぞれ仕事のはかどり具合も違うのに、みんな同じ時間に食事をとるっていう仕組みもムダだと思う。なんでわざわざ謝罪会見を開いたのかも謎だし、いろいろ要領の悪い国なんだなって感じるね」(ポーランド人・男性・28歳)
厳しいバッシングを受けなければ謝罪できない、問題を指摘されても知らぬ存ぜぬで押し通す……。そんなケースと比べれば、今回の会見は誠実だったかもしれない。
それだけに、この些細な出来事がキッカケで、日本社会全体が抱える問題に世界が注目するようになったことは皮肉としか言いようがない。
<取材・文/林泰人>