悲劇はまだまだ終わらなかった。これである程度の高額が動かせると判断したか、続いてやってきたのがリフォーム業者。
「あなたの住むお宅は欠陥住宅である」として不必要なリフォーム契約を取り付け、約1000万円の支払い契約書にサインをさせている。
このリフォーム代の数百万円分は現金で支払われたようだが、足りない分の資金は消費者金融で借りて補えば良いという入れ知恵までがなされ、その消費者金融から借りた金の焦げ付きから我々がやってきたという寸法だ。
この一件から両親が残してくれた家が取り上げられることになるかもしれないということで、ようやく親族が重い腰を上げ動き出した。
とは言えその動き方には少々問題があったようで、債務者に対しては責め立てや厳しい言葉があり、債務者が親切に感じていた業者も全てが悪徳業者で自分を騙していたと矢継ぎ早に知らされ、債務者は対人恐怖症を発症。
さらに、心臓の具合までも悪化させてしまいそのまま入院。退院後は家に戻って自活するという選択をせず、自らの意思で施設への入所を希望するに至った。
もちろん悪徳業者が褒められたものではないのは言うまでもないことだが、一概に法的な制裁を課すことや被害金額の返金などが求められるかと言えばそれも難しい。また行政としてこのような被害を未然に防止する手立てもなければ、一つ一つを発見することも困難である。
さらに、親族も債務者の知的障害の程度や置かれた状況、既に発生した被害の幾つかを確認していながら、「成年後見人制度」(意思能力に継続的な衰えが認められる者を法律的に支援するための制度)というものを利用せず、この段階で「成年後見人をつけておけばよかった」と語っている。
これらのなにか一つのパーツでも別の歯車に置き換わっていれば、ここまで酷い結末を迎えることにはならなかったのかもしれない。
幸せへの歯車。それらが複雑に絡み合い何か一つが欠けてもそこへたどり着けないものだとするならば、不幸せへの歯車も同じこと。何か一つを元凶と決めつけ、怒りや不快感をぶつけるべきではない。
このような不幸せの共有と情報の蓄積が、いくつかの事案を好転させる歯車の一つとなることを願いたい。
【ニポポ(from トンガリキッズ)】
ライターの傍ら、債務者の不動産を競売にかける『不動産執行』のサポートも行う。2005年トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。
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