震災対応で問われる安倍政権の危機管理の意思と能力

田中信一郎

震災翌日に突如会見を決めた加計学園の加計孝太郎理事長(右)と岡山理科大の柳沢康信学長 (写真/時事通信社)

野党は「災害よりもモリ・カケ」なのか

 6月18日の朝、大阪府北部を震源とする震度6弱の地震が発生しました。被害にあわれた方には、心からお見舞い申し上げます。筆者は、ちょうど新大阪発東京行の新幹線に乗車中で、高槻市付近を走行中でした。突然、下から突き上げるような衝撃が新幹線を襲い、跳ねて脱線したかと思いました。幸いにも脱線せず、夕方には東京に戻ることができましたが、あの衝撃と恐怖は忘れられません。

 さて、その日の午後の参議院で、安倍晋三首相と全閣僚出席による決算委員会が開かれました。そこで、日本共産党の辰巳孝太郎議員が、森友問題に関連する新たな政府の内部文書を入手したとして政権を追及しました。ところが、首相と麻生太郎財務相、石井啓一国交相は、事前の質問通告がなかったとして、答弁をしませんでした。

 その内部文書には、財務省理財局と近畿財務局のやりとりとして「最高裁まで争う覚悟で非公表とする」と記されていました。さらに、財務省の佐川宣寿前理財局長らの刑事処分について「官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている」などとも書かれており、政権が検察に介入していたことを伺わせる記述もありました。

 それを受け、自由民主党の長尾敬衆議院議員(@takashinagao)は「災害よりもモリ・カケ、ですか。情けない・゜・(ノД`)・゜・。今回の震災で多くの課題が見えたのですが、それよりも優先することがあるのですね。」とツイートし、野党の追及を批判しました。長尾議員は、被災地の大阪出身ですので、大災害の当日にもかかわらず、悠長に国会審議をしていることに憤ったのでしょう。

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 しかし、国会審議は、国会多数派である与党の同意がなければ、行うことができません。野党がいくら開催を求めても、開催の有無を決定するイニシアチブは、与党にあります。

 実際には、政府に災害対応へ集中してもらうため、野党が開催延期を提案したにもかかわらず、与党が開催を主導しました。19日の朝日新聞朝刊によると「野党は大阪北部地震への政府対応を考慮し、自民党に審議の延期を申し入れたが、自民党側が予定通りの開催を決め、委員会が始まった」とのことです。立憲民主党の蓮舫参院幹事長は「震災復旧への影響を懸念して、代表の指示で国対委員長を通じ〈延期〉も含めて参議院自民党に提案しましたが、〈予定通り〉開会とのこと」とツイートしています。

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 つまり、18日の参院決算委員会の開催は、与党主導によるものです。長尾議員は、自党の執行部を批判すべきです。あるいは、執行部批判のツイートだったのかも知れませんが、私にはそう読めなかったということになります。

 あるいは、せっかくの審議なのだから、災害対応について質疑すべきと、長尾議員は野党議員に憤ったのかもしれません。

 けれども、災害の真っ只中、国会で災害対応について質疑するのは、さらに問題です。国会で質疑を受けることになれば、少なくない担当官たちが国会に出席したり、答弁メモを作成したり、連絡業務に従事したりします。その分だけ、災害対応そのものに割ける人員が不足します。とりわけ、一定の判断を求められる幹部が、国会対応に忙殺されてしまいますので、行政の対応が遅くなりがちです。

 むしろ、国会が開かれた以上、災害対応への影響を最小限にするには、災害と無関係の質疑をした方がいいくらいです。そういう意味で、18日の参院決算委員会に限っては「災害よりもモリ・カケ」の方が適切だったわけです。

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過去の教訓を無視した政府与党の国会対応
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