見た目や話し方などの非言語情報は「話す内容」の強力な引き立て役
私のクライアントさんに、海外の事業で予算を取るためのプレゼン経験が豊富な人がいます。「伝わり方によっては予算が一桁変わることもある」という、かなりシビアなプレゼンをされている人なのですが、彼はこう言っていました。
「『うまい!』と思う人のプレゼンは、ボディランゲージや間の取り方あたりがなんとなく似ています。その人たちに聞いてみると、それぞれ専門のコーチやトレーナーがいるという。じゃあどこで彼らは個性を出しているのかというと、コンテンツの作り込み方や、組み立て方なんです。そこにしっかりと独自性があるので、一見似て見えてもしっかりと差別化されているのでしょう」
「似ている」と言っても、独特なボディランゲージや、元からのキャラクター、個性的な洋服などでも差別化はできます。例えばスティーブ・ジョブズの場合、片手で三角を作る権威のポーズなど、印象的なボディランゲージがあります。
米国大統領のドナルド・トランプ氏も、あの印象的な髪形と、発する言葉の強さ。大柄で存在感があり、空間を大きく使うので支配的な印象を受けます(トランプ大統領のプレゼンの真似をしたいという人は少ないのではないかと思いますが……)。
しかしやはり、両者ともその非言語情報の部分が話題にはなりますが、結局は「何を言うのか」という部分に注目が集まっています。9割の非言語情報は、1割の「話の内容」の引き立て役になっているのです。
「何を伝えるか」「どのように伝えるか」両方の視点を
初対面の人との出会いのシーンを想像してみてください。
まず初めに、視覚情報が機能します。見た目、人は第一印象でまず相手を判断します。体形、装い、髪形など。そして次に聴覚情報です。声の印象、高い・低い・太い・細いなど。
そして次にコンテンツ、話の中身へと移行していくわけですが、もし伝えたいことがなかったら? 見た目の印象が良くても、ただの“見掛け倒し”になってしまいます。逆に、コンテンツはしっかりしているのに、見た目や話し方の印象が良くなかったら? その人の話を聞きたいという欲求が薄れてしまいます。
ここもバランスが大事。そして、どの要素も欠けてはならないものなのです。まずは魅力的なコンテンツありき。そして、聴覚情報や視覚情報の印象を磨くことでその内容を引き立てる。意識としては、「何を伝えるか」と「どのように伝えるか」の両方の視点を持つこと。そうでなければ独りよがりなプレゼンになり、聞き手を置いていってしまいます。その観点が、これからはより必要な時代になってくると思うのです。
<文/雅ふみこ>
VOICETEC(ボイステック)代表。印象改革プロデューサー、フリーアナウンサー。人それぞれの個性を生かした話し方、魅せ方を専門に研究。行動心理士として、声や行動分析のプロとして、それらのスキルを融合させたトレーニングを開発・提供している。また、欧米の講師陣と積極的に交流して、欧米の理論を日本人向けに発展させたトレーニングも提供。クライアントは一般企業だけでなく、経営者、大学教授、医師、政治家、教師、僧侶、結婚相手を見つけたい男女など、それぞれに合った“印象改革”の方法を指導している。
個人ブログhttps://ameblo.jp/miyabifumiko-0909/