過去最高に暴力が横行した2017年を早くも上回る勢い
「Sin Embargo」紙の報道によれば、プロモーター企業Creaturaの部長、パトリシア・デ・オベソによると、「2011年以降、暴力は減少したように思われた。ところが、実際にはそれ以後犯罪の構造がより複雑になり、犯罪組織は公的行政組織にまで影響力を及ぼすようになり、誘拐や恐喝などを稼ぎのビジネスにするように変化した」というのである。それから発展して殺害も増加している。彼らは政治組織や警察組織にまで影響力を及ぼすことが出来るようになっているので、犯罪者を逮捕することも容易ではなくなり、仮に逮捕されても証拠不十分とか言ったことで釈放になるケースが非常に増えているのである。(参照:「
Sin Embargo」)
2017年は最近20年間で最も暴力が横行した年とされていたが、今年はそれを更に上回る傾向にあるという。なにしろ、今年第一四半期の鉄道や路上での強奪事件は850件以上で、それは昨年比5.8倍の増加なのだ。盗難に至っては、3300件で昨年比65%の増加だという。
殺害事件は、今年4月だと一日に90人が殺害されたという記録があり、昨年比25%増し。3月の燃料の盗難は34%増しといった結果になっている。
更に問題なのは、犯罪被害届を出そうと思ってもどこに出せば良いのか被害者は戸惑うということなのである。何故なら、警察も犯罪組織と内通している場合が往々にしてあるからである。
バージンの創業者リチャード・ブランソンは既に2014年、メキシコ経済紙『
EL FINANCIERO』によるインタビューで、「メキシコで治安の悪さを政府が解決すれば、彼はメキシコに積極的に投資する」と表明している。
いままでも米国の企業は労賃の安いメキシコへの投資をこれまでも積極的に進めて来ており、増える犯罪への対応策について各企業とも苦慮している。
メキシコでの米国企業の安全を確保するために彼らが行っているのが、投資先を比較的安全が保障されている自治州に変更しているということである。例えば、「タマウリパス、メキシコ・シティー、ゲレロ、チウアウアといった自治州から、比較的安全なケタロー、ユカタン、プエブラ、オアチャカ、ヌエボ・レオンといった自治州に投資先を移しているのである。
米国商工会議所に加盟している企業のおよそ1450社がメキシコに出資し、同国のGDPの21%を米国企業が担っているという。その内の100社はメキシコで最も重要な企業500社の中に含まれている。
メキシコが今後成長して行くには社会の安全を保障できる国にして行くことが必要である。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。