生き残りをかけた地銀再編の勝者はどこだ?
2015.01.01
オリンパス事件をはじめとした経済事件の裏側から、政治・マーケット分析まで、独自の視点で執筆してきた闇株新聞氏。経済記者も購読するそのメルマガには日本経済を読み解くヒントが満載だ。果たして、闇株新聞氏は2015年の日本をどのように見ているのか? 緊急寄稿してもらった。
11月4日に横浜銀行と東日本銀行、その3日後には肥後銀行と鹿児島銀行がそれぞれ共同持ち株会社を設立して経営統合すると報じられ、株式市場では各行が即座に反応。年初来高値をつけるほど物色されました。その直前の10月には東京都民銀行と八千代銀行が東京TYフィナンシャルグループを設立したように、ようやく’14年も終わりに差し掛かったところで、地方銀行の再編が本格化した格好です。
実は、地銀は最も再編が遅れている業界です。全国に銀行は116行ありますが、このうち105行が地銀になります。各都道府県に2行以上の地銀が存在しているのです。
10月末時点での全銀行の預金総額は670兆円で、貸出総額は446兆円。そのうち地銀の預金総額は308兆円で、貸出総額が220兆円になります。地銀は都銀の10倍もの数がありながら、1行あたりの預金・貸出はともに10の1程度しかないわけです。
その名のとおり、地銀は地方経済に果たす役割が協調されますが、法的にも業務的にも、都銀と変わりはありません。単に、地方に地盤を置く銀行を便宜上、地銀と呼んでいるだけです。
他の業界ではこのように、大企業の10倍もの中小企業が存在することなど考えられません。自動車産業は中小企業に支えられていますが、あくまで部品メーカーです。小売業界には地域密着型のチェーン店もありますが、一つの県全域を商圏に大手小売りチェーンと2つ以上の中小小売チェーンが同じ商品を売って、しのぎを削るということはありません。必ず、淘汰されます。
結論をいえば、地銀は25行程度に集約されるべきです。それも、メガバンクのように経営基盤からシステムまでを完全に統合する「合併」でなくては意味がありません。
その意味で、米国のバンク・オブ・アメリカが“地銀の成功モデル”になります。元は1874年にノースカロライナ州のシャーロットに誕生したコマーシャル・ナショナル・バンクという地銀です。’80年代以降、次々と州内・州外の銀行を買収して巨大化し、’96年には全米3位の巨大銀行となりました。
持ち株会社の下に地銀がそのままぶら下がる緩やかな経営統合でなく、大胆なコストカットで経営効率の改善を進めれば、日本でも十分にメガバンクに対抗しうる「巨大地銀」が誕生するはずです。
前述したように横浜と東日本が経営統合を果たせば、グループの預かり資産は13.6兆円となり、同11・8兆円のふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行・熊本銀行・親和銀行などを傘下に持つグループ)を抜いてトップに躍り出ます。しかし、それでもなお、千葉銀行(10.1兆円)や静岡銀行(8.2兆円)などの有力地銀が単体で存在し、再編の機会をうかがっているのです。’15年は地銀を取り巻く図式がガラッと変わることでしょう。
【闇株新聞】
大手証券でトレーディング、私募ファイナンスのアレンジなどを手掛けた某氏が’10年に創刊。オリンパス事件、AIJ投資顧問事件などで、いち早く真相を解き明かして話題に。’12年から有料メルマガ「闇株新聞プレミアム」を開始した
― [闇株新聞]速報 2015年の日本経済はこう動く!【2】 ―
浜銀・東日本の統合で本格化し始めた地銀再編
合併して“巨大地銀”を誕生させるべき
ハッシュタグ