コスタリカの一貫した長期戦略は「野心国家」であり続けること
再生可能エネルギー源による実際の年間発電率は2015年度以降、毎年98%以上を確保し、さらに注目が集まってきた。そのタイミングでの新大統領就任に「脱炭素化」をぶつけ、最大限の広告効果を得ることにとりあえずは成功した。
「とりあえず」というのは、実はカーボン・ニュートラル達成年度を2030年ごろに繰り延べようとする動きがあるからだ。とはいえ、国レベルで達成年度目標を示したのはコスタリカが世界初だったということは、事実として残る。
達成できなくとも、野心的な目標をぶち上げるだけで意味を持つ。野心的であればあるほど、広告の打ち方さえ間違えなければ、失敗しても「仕方ない、むしろよくやった」とプラスに作用させられる。
「過大広告」とも思えるこの戦術に今回もあえて踏み込んだのは、実際の目標達成以外に目的があるからだろう。それこそ、「国としての“理想的野心”を対外的に発信すること」なのだ。それにより、対内的にはなかなか進まない脱炭素化の「ネジの巻き直し」効果を狙える。対外的には「理想を追い求め続ける国」という評価がますます高まる。失敗してもリスクは少ない。
軍隊廃止を宣言した1948年、コスタリカは中米の辺境にある小さな貧しい国だった。それが今や、世界をリードするほどの存在感を見せつけている。それは、次のような一貫した手法によって成し遂げられてきた。
1.理想的かつ野心的な長期戦略目標を立てる
2.それを世界的に広告宣伝する
3.その目標を一定程度達成する
4.それをさらに世界的に広告宣伝する
5.新たな戦略目標を掲げる(=1に戻る。以下繰り返し)
こうしてコスタリカは、最貧国から世界のインフルエンサーにのし上がったのだ。
「丸腰国家」コスタリカ 次の戦略 第一回
<文・写真/足立力也>
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に
『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。