さらに今回はネット上の意見だけでなく、直接在日外国人にも「外国人専用車両」についての意見を聞いてみた。
「この記事は、いろんな問題に対して日本人がどう“対処”しているかを指摘したいんだと思う。日本人はそもそもの原因を直すんじゃなくて、根本的な問題を無視して、切り離すことが多いからね」(ノルウェー人)
たしかに、乗客を国籍で区切って別な車両に押し込めれば混雑が緩和される……というのは、文字通り問題を切り離していることに他ならない。このご時世ではちょっと考えられない、差別的な施策であることは言うまでもないだろう。
また、実際に導入されている女性専用車両と比較するような意見も出た。
「日本に限らず痴漢は多いし、特定の人を守ったり、安心させるうえでも女性専用車両は問題ないと思う。日本の通勤列車はかなりイカれてるし、どのみち好きな車両に乗れるしね。ただ、本当に人種隔離をし始めたら、かなり変だと思う」(アメリカ人)
日本人からするとほとんど目にする機会のない珍妙な題材のブラックジョーク。しかし、外国人の間ではかなりポピュラーなようで、今回の取材で質問をぶつけたときも、「そのサイト知ってるよ」という声が聞かれた。
「こういう記事はよく読むし、すごく好き! だいたいかなり誇張されてるけど、共感もできる。だって、本当にそういうことを考えそうな人もいるからね!」(フランス人)
たしかに、こういったブラックジョークやフェイクニュースは、現実をちょっぴり歪めて映し出す鏡のような存在だ。それは日本に限らず、万国共通。風刺や笑いは、社会が抱える問題について議論したり、考えるキッカケにもなる。
ただ、ひとつ心配なのは、ここ数年SNSなどで「『虚構新聞』かと思ったら、本当のニュースかよ……」というコメントをよく目にすることだ。在日外国人が「THE RISING WASABI」を引き合いに出して、同じようなことを言う日が来るのかと想像してみると、素直に笑えない自分がいた。
<取材・文・翻訳/林泰人>