キューバ国営航空は自社が所有している機材の大半が部品不足で運行できない状態にあることから今回のように他社から機材とパイロットらを一緒にレンタル契約をせねばならない状態にある。つい最近も党機関紙『Granma』が、国内便が支障なく運行しているということを報じたが、それはリトアニアのAvion Express との契約をひと月延長してエアーバス320と319を運行させているからだと、キューバ国営航空に以前勤務していたある人物が匿名でそれを報道メディアに伝えたそうだ。また南アのSolemuta Aviationからもレンタル契約でATR72-5002を2機運行させているという。(参照:「
Marti Noticias」、「
14ymedio」)
こうした事情もあって、キューバ国営航空が管理する航空事情は安全面で非常に問題があるとされている。
1929年からキューバでは600人が飛行機事故で死亡しているという。それに今回の事故を加えると死亡者は700人を越えることになる。(参照:「
ABC」
そして、キューバの航空事情の改善は長年一向に見られないそうだ。2012年にキューバはアントノフ―158を6機購入した。この機材を生産したのはウクライナであったが、40数機を生産しただけで、しかも、この機材を現在も使用しているのはウクライナ、ロシア、北朝鮮、キューバだけだという。
同機の部品の70%はロシアで生産されているが、ウクライナとロシアの紛争が原因となり、今後生産された僅か40数機を対象にロシアが部品を生産する意向はない。この為、キューバでは故障した箇所の修理が部品不足でできなくなっているという。1機が故障すると、一緒に購入した別の機材から必要な部品を取り出して修理するといった応急処置で対応していたが、今では全6機が飛ばせる状態でなくなっているという。(※参照:「
Clarin」)
同機以外にも、ツポレフTU-204が4機とイリューシンIL-96の4機がキューバ―の航空の主要機材となっているが、IL-96は現在2機が使用されているだけ。TU-204も時たま運行されるだけであるという。ちなみに、カストロ兄弟が外遊する時はIL-96を使用していたそうだ。
米国からの経済封鎖がなければ、米国から機材や部品の手配も可能であるが、それもできない状態にある。
この様な事情が今回の事故に繋がったのである。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。