「AIにできない仕事」を人間はできるのか? 注目の書/『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

注目の書/『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』  社内外からの問い合せ対応や新卒採用のエントリーシートの選考、農産物の管理など、AIはものすごい勢いで私たちの生活に入り込んできています。  加速するコンピューター技術。AIのおかげで、より便利でより快適な生活を手に入れることができるでしょう。その一方で、未来ある20代ビジネスマンとしてどうしても気になるのはAIに奪われる仕事のこと。  すでに、アメリカのゴールドマン・サックスでは株取引の自動化が進められ、2000年に600人いた本社のトレーダーは2017年にはたった2人。日本でも、大手3行がAI導入などの効率化で、3万2000人の業務量を削減すると発表しています。  AIに代替されやすいのはホワイトカラーの事務系の仕事。「そうは言っても、人間にしかできない仕事は必ずある」、そう思いたい方も多いでしょう。しかし、こうした楽観論をリアルなデータで打ち砕くのが、ベストセラーとなっている『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)です。  著者は国立情報学研究所教授で数学者の新井紀子さん。新井さんはまず、「AIはコンピューターであり、コンピューターは計算機であり、計算機は計算しかできない」と断言。「AIやAIを搭載したロボットが人間の仕事をすべて肩代わりするという未来はやって来ません」と、AIの限界を明らかにします。  その理由は明解で、「数学は、論理的に言えること、確率的に言えること、統計的に言えることは、実に美しく表現することができますが、それ以外のことは表現できません。人間なら簡単に理解できる、『私はあなたが好きだ』と『私はカレーライスが好きだ』の本質的な意味の違いも、数学で表現するには非常に高いハードルがあります」  本質的な意味の違いを理解しないというのは、AIにとって決定的な壁なのでしょう。新井さんが手がけた「ロボットは東大に入れるか」に挑戦した人工知能プロジェクトでも、ロボット(東ロボくん)はさまざまな学習の末、世界史と数学の点数は伸ばしますが、言葉や文章の意味を読み解く必要のある国語と英語の苦戦。150億文もの英語を学習させたにもかかわらず、東京大学の偏差値「77」には及ばなかったそうです。  が、東ロボくんが達した偏差値は57.1! MARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)や関関同立(関西大学・関西学院大学、同志社大学・立命館大学)レベルの大学の合格水準をクリアしたのです。 「その序列は大学進学希望者の上位20%」で、「ホワイトカラーを目指す若者の、中央値どころか平均値をAIが大きく上回った」わけで、「AIは勤労者の半数を失業の危機に晒してしまうかもしれない実力」をすでに持っているのです。
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AIのできない仕事を人間が担えるのか
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