新宿を代表するライブハウス、LOFTでは大森靖子がヘッドライナーに
’14年の第1回目、昨年の第2回目に続いての開催となった本年。歌舞伎町商店街振興組合・専務理事の柴本新悟氏はイベントの目標について、次のように語る。
「簡単に言えば『街興し』です。歌舞伎町に点在するライブハウスが自らコンテンツを作成し、フェスティバルを行うことによって、街のエンターテイメント産業の発展に寄与することを目的としています。このフェスがもっと成功していけば、『歌舞伎町でライブをやろう』『興行をやってみよう』というイベンターが現れるかもしれません。そのようなエンターテイメントへの“投資”が増える機会を創出したいと考えています」
開催中は普段以上に来訪者が増えるため、町内の飲食店や事業者への影響は大きい。前出の店舗関係者が語っていたように、継続的な効果も見込めるだろう。イベントの規模も、初年度は6会場で69組のアーティストが出演、2回目は8か所で103組、今年は10か所で121組と拡大してきた。
「現在、歌舞伎町は再開発が目まぐるしく進み、客観的に見ても街の雰囲気が以前に比べて様変わりしました。ビルの再開発などでハード面が刷新されていくなか、歌舞伎町商店街振興組合、組合の若手会員の間では、ソフト面となるエンターテイメントとカルチャーの活性化を行うことが喫緊の課題だと考えています。映画や飲食に並び、過去の歴史を見れば音楽エンターテイメントも、元来歌舞伎町が得意としている分野です。今でも数多くのライブハウスが存在していますし、日本の音楽シーンの屋台骨を支えていると言っても過言ではないと思います」
新宿BLAZEでは石野卓球などのアーティストが出演した
こう柴本氏が語るとおり、地理的な面だけでなく、イベントを運営する“中の人”が歌舞伎町に根ざしている点が、ほかのフェスティバルとの大きな違いだ。
「ライブハウスの店長やブッキング担当者が、自らアーティストを招聘してプログラムを作り、極力街のリソースを駆使して運営しています。もちろん、歌舞伎町ならではのコンテンツにも力を入れています。今年で言えば、愛本店が参加されたことですね。日本で一番の老舗ということは、全国にあるホストクラブ文化を作り上げてきた張本人と言っても過言ではありませんし、歌舞伎町の風俗文化の一端を担ってきたレジェンドとも言えます。その老舗店が、通常のホストクラブ営業の枠を越えて、街を挙げてのイベントに参加されたということには、とても大きな意味があります」
集客面だけでなく、歌舞伎町ならではのディープな内容も増やしていきたいという柴本氏。今後は、インバウンド客や日本在住で音楽好きの外国人などにも、積極的にプロモーションを仕掛けていく予定だ。「眠らない街」を舞台にした音楽フェスは、まだ始まったばかり。来年以降の内容にも期待したい。
<取材・文・撮影/林泰人>