所有する農地は産廃が投棄され、いつの間にか小高い山のようになっていた!
さて、今回紹介する不動産執行の現場はもちろんこうしたマイナス評価物件である。
しかも、購入できる人が限定される農地だから目も当てられない。これは詳細を確認もせずにこの土地を担保に金を貸した方にも反省点があるだろう。
最寄り駅と呼べるものは徒歩圏内に見当たらない国道脇の農地一反(約300坪)。
農業を営んでいた両親を早くに亡くし、姉が一人で相続した農地を切り売りしながら弟や妹の世話をしていたという家庭だった。
もちろん大昔の話なので、大きな財産を持った子どもたちを食い物にしようという、良くない輩もすり寄ってきた様子。
人の良かった姉は多くの田畑を二束三文で次々に持っていかれ、財産の減りゆく不安に継続的な収入を求めていた。
そこへ、「農地はもう売らないほうが良い。君から農地を買うのではなく運用し、利益が上がれば報酬を支払う」という男が現れた。
この申し出を受け入れると、そこから15年ほど男から定期的な報酬支払があったため、安心しきっていた。だが支払いが滞ってから25年、弟の事業失敗による差し押さえから事態が発覚した。
男は違法産廃業者で、廃棄物を預かった農地に数十年間も投棄し続けていたのだ。
気がつけば農地はいつしか小高い山となり、残土も被せてあるため今となってはどこまで何が埋められているのかわからない。
今から40年前の事案ということで役所も事態を把握しておらず、指導や注意などもなかったどころか、農地だとすら思われていなかったようだ。
男の足取りももちろん辿ることなど出来るはずがなかった。
この山を使用可能な農地へと回復するには、おそらく相当な費用を要するだろう。
さらに長年信頼してきた人々の裏切りにより、価値のある不動産が自分たちに一つも残されていなかったことも判明。姉は苦労して育ててきた弟や妹から厳しく叱咤され、全ての連絡を絶った。
この仕事をしていると、救いの見いだせない人生に触れることも多々ある。
本当に救済が必要な人は公的な救いの手を求める手立てどころか、その存在すら認識していない。申請しなければ差し伸べられない救いの手は、本当に救いの手と呼べるのだろうか。
監視社会には否定的な見解も少なくないが、救済が必要な人をいち早く検知し手を差し伸べることができるのであれば、全ての情報が筒抜けであろうと私は苦にならない。
【ニポポ(from トンガリキッズ)】
ライターの傍ら、債務者の不動産を競売にかける『不動産執行』のサポートも行う。2005年トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。
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