「ブラック企業なら転職すればいい」論が見ていない、低賃金労働層転職の現状

離職票

求人が多ければ転職が楽だというわけでもない。転職しやすい環境整備が遅れている

 4月27日に公開された最新の有効求人倍率(参照:e-Stat)は3月では1.62倍有効求人倍率(新規学卒者を除きパートタイムを含む)となっている。ここ数年は1.0倍を超え、上昇の一途だ。  しばしこの有効求人倍率の上昇を政治の功績として取り上げられたりするのだが、実際は人口比率が変わってきたことにともなう、労働人口の減少が主因である。しかも、この有効求人倍率が右肩上がりに上昇している状況が喜ばしい、と考えるのは早計だ。

求人は増えても「就職件数」はむしろ減少傾向

 問題の鍵は「就職件数」だ。有効求人倍率が1.0倍を超えだした2014年以前は、1か月平均で18万人を超える就職があったものが、以降になってからは毎年下落し、ここ3年を見ても2015年は約15.9万、2016年は約15.1万、2017年に至っては月平均が15万人を割り、14.6万になってしまっているのだ。  なぜこのようなことが起きてしまっているのか? これは求人における賃金や技能のミスマッチが原因だと言われており、その通りなのだが、実際に近年転職活動をしてきた人々に実態を聞いてみると、また別の問題も見えてきた。

ブラック企業から抜け出せない!

「退職してから転職するにはお金や時間がかかります。ブルーカラーで働いていたのでスーツの購入、転職活動期間の生活費、あとは社会保険から外れるので国民健康保険への加入手続などでも時間がとられます。勤めているうちに転職活動しろなんて言われても、毎日残業で平日休めるような状況じゃないのにどうにもなりませんよ。」(工場勤務のAさん・30代)  工場勤務のAさんの場合は、2つの「ない」が存在する。一つは「お金がない」、二つめは「時間がない」だ。そもそも転職する契機のメインは「低賃金」と「高稼働」だろう。この2つが該当してしまう人が圧倒的なはずである。  今や日本人の3割から4割が貯蓄額ゼロと言われているほど貧富の格差が広がっている状況で、低賃金・高稼働から脱出するために転職するというのに、活動の土台すら築けない人が圧倒的に多いのだ。 「もちろん転職サイトとかに登録して仕事は探しているんです。ですが結局は『面接しましょう、平日のいつにしましょうか』となる。仕事を休んで面接に行けばその分給料はがっつり引かれます。休日に面接をしてくれるような会社はあるにはありますが、休日も営業している時点で高稼働な職場である確率も上がってるんです」(Aさん)  求人が増えたとしても、現状で苦しんでる人に今の仕事を休んでまで面接に行くような「余裕」が金銭的にも時間的にもないのだ。
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失業保険を『諦めるようにできている』
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