カニエ・ウエストがトランプ大統領に洗脳された!? 大炎上発言の背景

トランプとの会談前に精神的問題で入院

 興味深いのは、以前のカニエは真逆とも言える考え方をしていたことだ。’05年にハリケーン・カトリーナがアメリカ南部を襲った際には、NBCの生放送中に「ブッシュ大統領は黒人のことは何も考えていない」と発言。物議をかもしたが、大物ラッパーのJAY-Zなど、黒人コミュニティからはよくぞ言ってくれたという反応がほとんどだった。  さらに’09年にはMTVビデオミュージックアワードで、最優秀女性アーティスト賞を受賞したテイラー・スウィフトのスピーチに泥酔して乱入。「ビヨンセが史上最高のビデオを作ったアーティストの一人だ」と発言して、会場内がブーイングに包まれただけでなく、オバマ大統領に(オフレコで)「馬鹿者」と言われてしまう事態となった。背景には以前から「アワードでは白人アーティストが優遇されている」と主張するなど、不公平な音楽業界への不満があったとみられている。  このように時々羽目を外してしまうほど、常に黒人コミュニティに寄った立場を貫いていたカニエだが、‘15年には本当かウソか突然、2020年のアメリカ大統領選に出馬すると表明。’16年にはライブ中に「結局、投票はしなかったが」もし投票していたら、トランプに入れていた」と発言し、これも大きな話題を呼んだ。しかし、同年11月にはライブ中に盟友であったはずのJAY-Zやビヨンセをライブでディスするなど、精神状態が不安定に。ツアーをキャンセルして入院するまでに至った。その直後の12月には、トランプタワーで大統領就任が決まっていたトランプと会談を行い、「人生」について語り合ったことを『ローリングストーン』誌などが報じている。
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大統領就任前のトランプと会談したカニエ。『ローリングストーン』誌など、多くのメディアが報道した

 このときはトランプ大統領の「肥だめ」発言の前だったことや、カニエが繰り返し大統領選出馬をほのめかしていたことから大きな騒動にはならず、ヒップホップ業界からも批判的なコメントは出てこなかった。例えば熱烈なバーニー・サンダース支持者で、リベラルな立場で知られるラッパーのキラーマイクは、イギリスのテレビ局チャンネル4の番組内で次のようにカニエを擁護している。 「別に気にならなかったよ。会ったっていいじゃないか。黒人は恒久的な仲間や敵を持つべきじゃない。恒久的な関心を持つべきなんだ。もしキング牧師が(アラバマ州知事で差別主義者の)ジョージ・ウォレスのような人物と会えていれば、差別主義者にならずにすんでいただろう。ある意味で神を見いだして、のちのどんな知事より多くの黒人を政権に受け入れていたはずだ」  しかし、前出のとおり、今回の親トランプツイート後は批判的な意見が圧倒的だ。また、精神的な問題で治療が必要なのではないかという声もあれば、大統領選に向けての炎上商法だという意見もある。それとも、以前のカニエの政治的立場や考え方とは矛盾しているようにも思えるが、2人は本当に「兄弟」のような存在なのかもしれない。  大統領選では黒人層の8%しか票を得られなかったトランプ大統領のいったい何が大物ラッパー・カニエを惹きつけるのか? 大統領候補としても、アーティストとしても、今のところはネガティブな作用しかないのが現実だ。 <取材・文・翻訳/林泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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