欧米で拡大する極右&宗教右派によるヘヴィーメタルバンドへの弾圧が増えている!

 昨年の総選挙で94議席を獲得したドイツの「ドイツのための選択肢」や、ルペン氏率いるフランスの「国民戦線」(大統領選では完敗したものの過去最高の得票率を記録)、ポーランドの与党「法と正義」など、近年ヨーロッパでは極右政党や民族主義的な右派ポピュリズム政党が勢力を拡大している。テロへの警戒心や移民の取り締まり強化などが理由に挙げられているが、そんな極右勢力が台頭する欧州で宗教右派による表現弾圧とも言える事態が起きていることをご存知だろうか?

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ブラックメタルバンドBEHEMOTHの訴訟問題について報じる『REVOLVER』

ライブ中止の裏に保守政党の陰

 こう聞くとイスラム系移民との対立をイメージしてしまいがちだが、今回取り上げるのは、キリスト教系保守団体とヘヴィーメタルバンドの対立だ。まず今年1月には全米ビルボードチャートにもランクインするなど、世界的な人気を誇るポーランドのバンドBEHEMOTHのメンバーが訴訟をおこされた。

 『REVOLVER』誌によれば、理由はポーランドの国章を模したグッズを販売したことだという。4月16日に訴えは棄却されたものの、当初は実刑もありうるということで、音楽ファンから注目されたニュースだ。『東欧ブラックメタルガイドブック:ポーランド・チェコ・スロヴァキア・ハンガリーの暗黒音楽』(パブリブ)の著者である岡田早由氏は、次のように語る。

「BEHEMOTHは’16年にポーランド国内でツアーを行ったのですが、その際にポーランドの国章を思わせる鷲に逆さ十字を組み合わせたデザインを、ツアーのフライヤーやマーチャンダイズに使ってしまったんです。しかも、そのツアー名は『不誠実共和国』(ポーランドは共和国)で、’16年の時点でも、このツアーを中止にさせようとポーランドの宗教団体を中心に署名活動が行われていたほどです。結局、ツアーは無事に行われ、一件落着したかと思っていましたが、今年に入ってついにポーランド国家から訴えられてしまったんです」

 同バンドを巡っては過去にもトラブルが起きており、そういった点もポーランド当局を動かす原因になってしまったのかもしれない。

「過去にもライブパフォーマンスの一環として、ステージで聖書を破り、裁判沙汰になっています。訴えた側のカトリック団体が勝訴したら、フロントマンのネルガルは2年の禁固刑が課されるところでしたが、幸い敗訴したため刑務所行きは免れたようです。また、ネルガルはポーランドの人気TV番組にレギュラー出演していたのですが、これをよく思わない団体が声を上げたことにより、番組を降板させられるという事態も起きています」

 いまのところ司法が機能しており、ギリギリ歯止めがかかっている状態だが、ポーランド国内ではこういったアーティストへの圧力が増え続けている。5月2日にはスウェーデンのブラックメタルバンド、MARDUKが公演を行うはずだったが、会場内に侵入者が。建物に水が通らなくなってしまったため、ライブは中止になってしまった。『Wyborcza』誌によれば、数週間前には「法と正義」の関係者がコンサートの中止を求める内容の声明を会場付近のメディアなどに送っていたという。コンサートの運営側は「政治的な圧力」があったとしている。

「MARDUKに関しては、以前も会場の前で宗教団体がたむろしてライブを中止にさせようと訴えている姿を見かけたことがあります。また、その他の例では、‘04年には、ノルウェーのブラックメタルバンドGORGOROTHがステージに全裸の男女を磔にして登場させたり、羊の頭を使用したことによって、宗教的冒涜とされてポーランドで活動することができなくなってしまいました」(岡田氏)

 そもそもポーランドは人口の9割以上がカトリック。ヘヴィーメタルにあまりいい印象を持っていないという人も多いだろう。しかし、当局が訴訟を起こしたり、ライブの中止を求め始めるようになったのは右派ポピュリズム政党の「法と正義」が支持を広めてからだ。近年、日本でも表現規制についての議論は活発になっているが、近い将来、遠い国で起きた知らないバンドの話ではすまなくなるかもしれない。これまで見てきたとおり、政権の意志にそぐわないアーティストが規制されるという事態は現実に起きているのだ。

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