「ピッチャーは走り込め」論は完全に時代遅れなのでいい加減やめるべき理由

林泰人

スプリント系のトレーニングが効果的

 しかし、当たり前だがメジャーリーガーもまったく走らないわけではない。注目するべきは走り込みの是非ではなく、その質や内容だ。いったいどのようなトレーニングが適しているのか? ストレングス&コンディショニングコーチのフィル・トグネッティ氏は、「STACK」に、6つの効果的な野球向けコンディショニングを紹介している。  それによれば、野球の試合ではゆっくりと長い距離ではなく、瞬発力を使って短い距離を走る機会が多いと指摘。そのうえで次のようなトレーニングが効果的だという。 ―異なる距離のスプリント―  ファールラインを起点に約18、36、54メートルの距離を走る。スプリントを終えるごとにスタート地点まで歩き、戻ったタイミングで再び走る。メニューは以下のとおり。 ・18メートル×2 (75%程度の力で) ・36メートル×2 (全力で) ・54メートル×2 (全力で) ・36メートル×2 (全力で) ・18メートル×2 (全力で) ―フライングスタート―  すでに動いている状態からスプリントを行う。ファールラインを起点に、途中までは50~75%程度の力で走る。スプリントを終えるごとにスタート地点まで歩き、戻ったタイミングで再び走る。メニューは以下のとおり。 ・27メートル×2 (50%程度の力で) ・54メートル×8 (最初の27メートルは75%程度の力で走り、残り半分は全力で) ―ベースランニング― コンディションを整えるだけでなく、同時にベースランニングの技術も鍛えることができる。メニューは以下のとおり。 ・本塁から一塁までスプリント。二塁まで歩く ・二塁から試合中と同程度の距離のリードを取り、本塁までスプリント。シングルヒットで生還する想定。一塁まで歩く。 ・一塁からリードを取り、三塁までスプリント。本塁まで歩く。 ・二塁打を打った想定で、本塁から二塁までスプリント。三塁まで歩く。 ・三塁からリードを取り、内野ゴロで生還する想定で本塁までスプリント。一塁まで歩く。 ・一塁からリードを取り、本塁までスプリント。 ・完全に回復するまで休み、上記のメニューを1〜3セット行う。 ―シャトルラン― 機敏さや、急な方向転換をする力を鍛えられる。約9から18メートルの距離で2つのコーンを置き、その間でスプリント。メニューは以下のとおりで、各セットの間に1〜2分休みを入れる。 ・27メートル×2 (コーンの間は9メートル) ・54メートル×2 (コーンの間は13メートル) ・54メートル×2 (コーンの間は18メートル) ・54メートル×2 (コーンの間は9メートル) ―スレッドプッシュ―  スレッドとよばれる負荷の掛かったソリのようなトレーニング器具を押すことで脚の動きを鍛える。重いものを載せ、強さを鍛えてもいいし、軽い重量でスピードを鍛えるもよし。約27メートルの距離で、3~6セット押す。 ―ラテラルスレッドドラッグ―  ロープやストラップ、ハンドルなどをスレッドに付け、横向きになって片手で引く。約18メートルの距離で3~6セット引く。  このように、負荷を掛けた短距離のダッシュや、インターバル的なラントレーニングが効果的だとしている。  また、ある日本人のトレーナーは「ラントレーニングで足腰を鍛えるというのは完全にお門違い。足腰を鍛えるのなら、スクワットやデッドリフト、クリーンなどのフリーウエイトトレーニングや、あるいはタイヤフリップ(巨大なトラックのタイヤをひっくり返すトレーニング)などを行うべきです」という。  しかし、いつまでたっても日本の球界、いやスポーツ界全体が、金科玉条の如く「走り込み」を押し付けたがるのは、ラントレーニングというものを何らかの「懲罰」や「根性育成」のようなものだとしか考えていないからではないだろうか。  このような旧態依然とした考えの指導者が居なくならない限り、無駄な根性論やただ単に辛いシゴキが横行し、時折天才的な選手が活躍はするけれど、「辛いけど合理的で効果があるトレーニング」によって優れたアスリートが継続的に育たないという状況は続いていくのかもしれない。 <文・翻訳/林泰人> (*1)Rhea, M., Oliverson, J., Marshall, G., Peterson, M., Kenn, J., & Ayllon, F. (2008). Noncompatibilty of Power and Endurance Training Among College Baseball Players. The Journal of Strength and Conditioning Research , 230-234.
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