安倍政権による「道徳の教科化」はここがダメ! 前川氏、安倍首相の「お膝元」で教育改革を批判

「自己犠牲が正しい」という徳目だけを押しつけるな

記者の取材に答える前川さん

講演後、記者の質問に答える前川氏。安倍政権の「教育改革」に対する懸念を繰り返した

 講演後に前川氏は、次のように記者に語った。 「今日は手品師の題材を取りあげましたが、『自己犠牲をすることが正しい』という一つの徳目だけを押しつける話になってはいけない。『いろいろな道徳的価値が対峙する場合があるから、それをどうやって切り抜けていくのかを考えないといけない』ということを言いたかったわけです。あの手品師の話は、(道徳の)教科書の書き方としてはやや問題があると思っています」  戦前は「修身」と呼ばれる、社会が“こうあるべき”と考える人間像を教え込む授業があった。この「修身」は軍国主義とのかかわりなどから批判され、戦後は停止された。その後1955年から「道徳」の時間が設けられるようになったが、人間の生き方に正解はなく、他の教科のように数値的な評価はつけられないことなどを理由に、これまでは教科にはなってこなかった。  しかし安倍政権がすすめる今回の「教育改革」では「道徳」を教科として扱うことに。週1回・年間35時間の授業を行うことを義務づけ、教科書も作ることとなった。文科省の事務方トップであった前川氏が懸念するこの「道徳の教科化」、実際の教育現場ではどう扱われていくことになるのだろうか? <取材・文・撮影/横田一> ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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