北朝鮮の冷麺は他とどう違うのか?
昨日の南北首脳会談で、金正恩第一書記が「平壌冷麺」を話題に上げた。韓国ではその報道を受けて冷麺店に客が殺到し、局所的な「冷麺特需」が起きたと報じられた。
北朝鮮の名物料理といえば冷麺であるが、決して、食糧難でそれしか食べるものがないからではない。
日韓にもおいしい冷麺はいくらでもあるが、平壌冷麺はほぼ“別格”と言っても差し支えないだろう。
在日朝鮮人のみならず、訪朝経験のある日本人までも口を揃えるため、主観とは言い切れないだろう。その体験は、『SUSHI』しか食べたことのない外国人が、日本で本物の寿司を食べて感動する例と似ているかもしれない。
北朝鮮に何度も渡航してきた筆者としては、冷麺だけなら日本への入国が許されるのではないかとさえ感じる。
だが、実際はそう簡単にはいかない。それは政治的事情ではなく、品質保持と味付けの問題だ。
昨日は、板門店の北側領土である「統一閣」に平壌冷麺専門店である「玉流館」調理人が派遣され、その場で打った麺が南側にワゴンで即時配達された。
金正恩氏が、至近距離に料理人を配置し、製麺機を運び込んでまでこだわった理由は、原料と鮮度が重要だからであると推測される。
冷麺の主原料となる蕎麦は本来、寒い地域での栽培が適しており、南方ではパサついた品種になる。そして、少しでも時間を置くとそば粉の臭いが強くなる。
金正恩氏が「苦労して持ってきました」と語ったのも、あながち誇張ではないだろう。