政府が検討する外国人技能実習生の「特定技能(仮称)」制度は、奴隷的労働を延長させるだけだ!

nero / PIXTA(ピクスタ)

 日経新聞が4月11日配信で「外国人、技能実習後も5年就労可能に 本格拡大にカジ」という記事を報じた。  記事によれば、“最長5年間の技能実習を修了した外国人に、さらに最長で5年間、就労できる資格を与える。試験に合格すれば、家族を招いたり、より長く国内で働いたりできる資格に移行できる。5年間が過ぎれば帰国してしまう人材を就労資格で残し、人手不足に対処する”目算だという。  これに異を唱えるのが、労働事件や入国管理事件を専門にする弁護士、指宿昭一氏だ。  指宿氏はこのニュースが報じられるといち早く、Twitterで“奴隷的労働が蔓延していると批判されている技能実習制度(最長5年)を温存し、その後に、5年間の「特定技能(仮称)」を認めるという制度が検討されている。「技術移転を通じた国際貢献」という建前もかなぐり捨て、労働力確保のためのなりふり構わぬ制度案”、“10年間、家族の呼び寄せも認めず、その後の永住申請も認めない。労働者の人権保障も多文化共生も考慮しないという「移民政策」を導入するつもりか!?”と舌鋒鋭く批判した。

技能実習制度が抱える構造的奴隷労働問題

 指宿氏は語る。 「そもそも、奴隷的労働が問題視されている技能実習制度を前提にしてそれに上乗せするという制度であることが大きな間違いです。そもそも技能実習制度の奴隷的労働環境はどのようなものかご存知ですか? 建前上は、技能実習には労働基準法が適用されるはずなんですが、無視されているケースが極めて多いのが現状です。 賃金は、条件が良いところでも最低賃金なのが当たり前。実際は、さまざまな理由を付けてそこから引かれます。例えば、工場の2階の狭い部屋に何十人も詰め込んで、一人3万円とかの家賃を取るんです。さらに水道光熱費だなんだかんだといって天引きする。残業代だって時給300円とかで何時間も働かされます。もし有給休暇を取りたいといったら、強制帰国させられる」  そうした問題の具体例が、「有給希望の実習生に強制帰国」(共同・4月7日)であり、技能実習制度で来日していたベトナム人男性を除染・解体作業に従事させたていたにも関わらず、「ベトナム人技能実習生の手当、大半を未払い」(読売新聞・4月7日)していた件なのだ。そしてこれらは氷山の一角でしかない。 「労働監督行政も頑張って対応しており、毎年4000件くらいの事業所に調査に入って、7割以上で違法事例を見つけているんです。2016年は5672件の監督指導を実施し、そのうち70.6%にあたる4004件で労働基準関係法令違反が認められました。5672件も調査に入るということは、それだけ怪しいところがあったってことです。普通は、労働関係の法令違反の調査は、労働者自身の申告で入ることが多いんですが、技能実習制度で働く外国人の場合は、本人からの申告は極めて少ないんです。2016年で技能実習生自身からの申告は88件に過ぎないんです」(※参照:厚生労働省資料)  指宿氏は、技能実習生をして「物を言えない労働者」だという。なぜものが言えないのか? それは言葉の壁だけではない。
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「物を言えない」実習生たち
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