偉人の部屋は汚かった!? 無理にミニマリストを目指すと才能が潰れることが明らかに

片付けで能力が引き出されるタイプと、そうでないタイプの違いとは?

 その事に繋がる、こんな具体例をご紹介しましょう。  以前、ある主婦の方から、旦那の部屋が片づかないのをどうにかしたいというご相談をいただきました。その方の話をお伺いしながら、旦那様とも一緒にお話をする機会を設けていただきました。  そこで旦那様の職業をお伺いすると、広告業で企画・立案をするような、クリエイティブな分野で仕事をされていることがわかりました。  そのことが分かったので、僕はこんな質問をしてみたのです。 「奥様が満足されるよう旦那様の部屋を片づけてスッキリさせるということは、旦那様の仕事のクオリティを落として、収入減に繋がる可能性があります。奥様は質素に暮らすことが理想ですか?」  そうお伺いすると、「収入が減ることを理想にする訳がないじゃないですか!」と、彼女は語気を荒げられました。  やり取りをしながら、僕が質問したことの真意をお伝えすると、奥様が旦那様に対する見方が変わり、旦那様もご自身の片づかない状態に対する罪悪感がなくなり、仕事でも今まで以上に結果を出すように。結果的に、関係性も改善されていったのです。  綺麗に整った部屋よりも、散乱した部屋で活動をしていた方が、人はクリエイティブになるという研究結果があります。ミネソタ大学のキャスリーン・ヴォース教授は、このように述べています。 「散らかった環境は古い習慣から脱却させ、新しい考え方を生み出すためのインスピレーションを与えます。いっぽう、整理整頓された環境は習慣を大切にし、失敗しないよう促す傾向にあります」  片づけとは、そもそも、どんな行為なのか。その基本的な部分から見ていくと、決まったイメージから逆算して現在の行動を決める行為が、片づけです。  この観点から見たときに、綺麗好きの方や、片づけが得意な方は、決められた範囲で行動するスペシャリストと言い換えることができますが、裏を返せば、枠内思考になりやすいのが、綺麗好きタイプでもあります。  逆に、片づかないタイプの人を、見方を変えて捉えると、「既存の枠を超えた発想ができる人」でもあるのです。  先ほどのご相談に話を戻すと、今回の旦那様もまた、「既存の枠を超えた発想ができる人」でした。だからこそ、そんなタイプの人が片づけを意識しすぎると、小さな発想の枠に収まってしまうことで、持ち前の才能を伸ばせなくなる可能性が大いにあるのです。  そしてこれは後日談ではありますが、結果的に旦那様は、奥様が何も言わなくても、積極的に片づけるようになったと話をしてくれました。  もちろん、旦那様は今でも常に片づいた状態でいるわけではありません。ただ、それ以来奥様は、旦那様の部屋が散らかる時は、「何か新しいものを生み出そうとしているのかな?」と、考えるようになったとのこと。  だからこそ、その状態に目くじらをたてることもなく、そっと見守るようにしたそうです。そして、そんな状態の時にこそ、逆に旦那様の応援をするように心がけたようです。  すると、一通り考えて何かが生まれた後には、気分転換に自分で片づけをするようになったとのことでした。  散らかった状態があっても良いと思えると、必要を感じた時に自発的に、積極的に片づけるものです。  人生をより豊かに過ごすことを目的にするならば、その人らしさを見据えた上で部屋の片付けを捉えていくことが大切です。  世間の流れに翻弄されて、「ミニマリスト」になることが良いと思い込んでしまうと、人によっては自分の才能までもが「ミニマム化」されてしまう可能性があることは、肝に銘じておいたほうが良いことでしょう。 【伊藤勇司】 日本メンタルヘルス協会カウンセラー。引越業に従事していた頃、「部屋と心の相関性」に着目し、1000軒以上の現場をもとに独自の「空間心理」理論を確立。片づけの悩みを心理的な側面から解決する「空間心理カウンセラー」として2008年に独立。セミナー、講演、セッションを、これまで約10,000名に実施。クライアントは主婦から企業経営者、作家などまで幅広い。著書に、最新刊『座敷わらしに好かれる部屋、貧乏神が取りつく部屋』(WAVE出版)10万部を突破中の『部屋は自分の心を映す鏡でした。』(日本文芸社)。 空間心理カウンセラー・伊藤勇司公式ブログ
日本メンタルヘルス協会カウンセラー。引越業に従事していた頃、「部屋と心の相関性」に着目し、1000軒以上の現場をもとに独自の「空間心理」理論を確立。片づけの悩みを心理的な側面から解決する「空間心理カウンセラー」として2008年に独立。セミナー、講演、セッションを、これまで約10,000名に実施。クライアントは主婦から企業経営者、作家などまで幅広い。著書に、『毒舌フェニックスが教える家族を救う片づけ』(KADOKAWA)ベストセラー『座敷わらしに好かれる部屋、貧乏神が取りつく部屋』(WAVE出版)。空間心理カウンセラー・伊藤勇司公式ブログ
最新刊『あなたの部屋が汚いのは、才能がありすぎるから』(主婦の友社)
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会