コスメ業界労働組合の結束も強い。
エスティローダーやM・A・C、ボビー・ブラウンなどを運営するELCA コリア労働組合もシャネル労働組合に賛同し、「私服勤務」の争議行為に参加。さまざまな労働環境の改善を要求した。
こちらはELCA コリアが早急に対応し、組合との交渉は円満に解決。従来のユニホームを着用する「正常業務」に帰した。そのほか、ロレアルやロクシタンなどの化粧品企業の労働組合も、シャネル本社の態度を「詐欺行為」と批判する共同声明を出し、シャネル労組側の支持を示している。
韓国ではいま、労働組合に対する会社の方針や対応に関心が高まりつつある。
その背景には、連日次々と明らかになる、サムスングループによる卑劣な「労組潰し」の影響が大きい。
サムスンは、創業以来78年間、無労組経営方針を固守してきた。
しかし2011年にサムスン・エバーランド(現在は第一毛織株式会社に社名を変更)で働いていたチョ・ジャンヒ氏が初となる労働組合を設立。これを受けてサムスンは、労組設立直後にチョ氏を強制解雇した。
理由は業務上背任行為と営業秘密漏洩などだ。当時のサムスンの対応から、「サムスンでは、労働組合活動すれば解雇される」というのが暗黙の了解となった。
今回、検察がサムスン電子から押収した6千件の文書には、「2013年末 1000人を超える協力会社の従業員が労働組合に加入したが、会社の『対応』によって約800人まで減らせた」という報告書などが含まれていた。
ここで言及されている「対応」とは、2013年7月に設立された労働組合「サムスン電子サービス支会」に加担する組合員に労組分裂を煽り、組合員が分裂工作をかたくなに断る場合には、事務所を閉鎖し、表面だけの「廃業措置」を実行するという案だった。
ほかにも、一部の組合員を金銭で買収する方法や、非組合員にだけ仕事を発注させ、経済的格差を生み出すような内容も盛り込まれていたという。
サムスン電子サービスの従業員たちは、協力会社所属の間接雇用労働者であり、給料も月給ではなく、1件当たりの歩合として支給されるため、仕事がなければ収入が大幅に減る。すなわち、組合員は仕事がもらえないため、経済的にも追い込まれるという仕組み。
事実、2014年5月にサムスンの労組弾圧などに抗議しながら、その苦悩の末に自ら命を絶った組合員のヨム・ホソク氏が、3月と4月に受け取った給料はそれぞれわずか70万ウォン(約7万円)と41万ウォン(約4万1千円)。
残された遺言にはこう書かれていた。
「もうこれ以上、いかなる犠牲も、他の組合員が悩む姿も、見たくありません。見ていられません。こうなるのは、私だけで十分だ。身を挺して、労働組合の勝利を祈ります」(参照:
京郷新聞)
ひと昔前の絶対的だったサムスン帝国も、徐々に崩壊しつつある。
たとえ業界トップだといっても、「シャネル コリア」も同じ。世界的なブランドイメージをも覆しかねないシャネル労組によるストの敢行によって、今後の会社の対応に注目が集まっている。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>