コスタリカ大統領選の「子ども投票」が盛り上がるワケ

テレビ局や家電量販店など、民間企業も参入

 筆者は2002年から毎回コスタリカの選挙を調査・取材している。当初は首都サンホセの一か所でしか行われていなかった子ども投票は、今や全国各地で様々な団体により開催されるまでになった。今回の選挙でも、数万人の子どもたちが全国で投票している。  投票を主催する団体も、当初は大学などが中心となったボランティアグループだった。やがて国立子ども博物館などの公的機関も参入するようになり、実際の選挙を司る選挙最高裁判所も、投票用紙や投票箱などのフォーマットを主催者に提供したり、投票に使う子ども用の身分証明証を発行したりするなどして後押しを始める。さらには国営TV局も加わり、子ども投票の様子を地上波で流すようになった。  今回はさらに規模を拡大し、民間のテレビ局や家電量販店までが子ども投票を開催するまでに発展した。特に、全国に店舗網を広げる家電量販店ゴジョの参入は、首都圏でしか行われていなかった子ども投票を隅々にまで広げる大きな役目を果たしている。

お祭り騒ぎを盛り上げて民主主義を強化、実利もしっかり取る

エドゥアルド・コルドバ氏

「子どもたちにこの国の民主主義が浸透し、うちは商売繁盛です」と笑うゴジョのマーケティング部長、エドゥアルド・コルドバ氏

 ゴジョの子ども投票の責任者は誰なのか、調べてみて驚いた。広報部でもCSR担当部門でもなく、マーケティング部長が担当しているというのだ。早速、そのエドゥアルド・コルドバ部長に直接経緯を聞いてみた。 ――民間企業であるゴジョが子ども投票を行う目的は何ですか? コルドバ部長:この国では、選挙は民主主義の国民的なお祭りです。ですから、第一には子どもたちにこのお祭りを楽しんでもらうこと。第二に、民主主義をつくっていくこと。そして第三に、もちろん売り上げに貢献することです。 ――そもそもマーケティング部が主導して考えたんでしょうか? コルドバ部長:民間企業だから当然です。子どもが店に来れば、親が一緒に来るでしょう? そこで子どもがおねだりをすることも計算に入れています。これで通常より5割の売り上げ増ですよ。 ――したたかですね。 コルドバ部長:私たちは4年前から眼鏡事業に進出しました。そこで気づいたのが、目が悪い子どもたちは多いのに、眼鏡は彼らにとって高価だということです。そこで、子ども投票をしている私どもの店舗に大統領候補が1人来るたびに、1万人の子どもたちに無料検眼券をプレゼントすることにしました。子どもたちと大統領候補が直接会える機会を作りつつ、子どもたちの健康増進にも貢献し、私たちは売り上げを伸ばす。ウィン-ウィンでしょう?
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子どもたちが決める未来
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