「田端信太郎」とは「リアル矢島金太郎」であるという話 「サラリーマン最終列車」#2

真実一郎
サラリーマン金太郎 LINEの元執行役員だった田端信太郎さんがZOZOTOWNに転職した、というニュースが今月初めにネット界隈を駆け巡った。インタビュー記事などを読むと、指名で引き抜かれたらしい。一人のサラリーマンの転職がtwitterのトレンド入りをするなんて、これまでほとんどなかったことだろう。

 そして転職後、まだ二週間しか経っていないのに、早速ツイートが炎上して会社のレピュテーションを軽く脅かしている。普通のサラリーマンならクビを恐れてビビるはずなのに、心臓に剛毛でも生えているのかのように、本人のtwitterアカウントは全くの通常運営で、普通に働いている。

 そう、彼は起業家でも経営者でもなく、会社からサラリーを貰っている一介のサラリーマンだ。かつてのIT起業家やノマドワーカーは、ラフな私服を着ることでサラリーマンとの対立構造を演出していたけれど、田端さんはいつも高そうなスーツをビシッときめていて、サラリーマンであることを意図的に演出しているようでもある(ただし最近はZOZOスーツを着ている)。

 田端さんはNTTデータ、リクルート、ライブドアなど転職を重ねることで自らの市場価値を高め、毀誉褒貶はあっても「田端信太郎」という個人名をブランド化し、一本釣りされる人材としてビジネス的に成功してきた。海外ではこうしたケースは珍しくないけれど、日本のサラリーマン社会では新しいサクセスモデルとして際立っている。

 個人の名前で会社に指名されて渡り歩く、摩擦を恐れない一匹狼のサラリーマン。その姿は、働き漫画の金字塔『サラリーマン金太郎』の主人公、矢島金太郎に重なる。ポストバブルの日本が必然的に生み出した架空のキャラクターが、サラリーマン信太郎としてようやく現実の存在になったのだ。

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会社に依存しない個としてのサラリーマン

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