リーマン・ショックから10年、ついに米国銀行株が騰がっていくのか?

不正発覚のウェルズ・ファーゴ以外は堅調な伸び

●JPモルガン・チェース  2月23日のJPモルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)の株価の終値は、117.31ドル。S&P500と比較すると、過去5年[JPM +133.7%、S&P500 +78.1%]、過去2年[JPM +95.4%、S&P500 +40.6%]、過去1年[JPM +29.7%、S&P500 +15.9%]である。  JPモルガン・チェースの株価が、上記三つの期間の全てにおいてS&P500を大幅にアウトパフォームしているが、業績が極めて良い。1月12日に発表された2017年第4四半期および通期の決算では、平均コア融資成長率は前年比+6.0%、前期比+2.2%であった。(参照:jpmorganchase.com)  JPモルガン・チェースはさらに、1月23日、今後5年間で総額200億ドルの投資計画を発表した。(参照:jpmorganchase.com)  米国内400の新店舗、中小企業向け融資の40億ドルの増大、4000人の従業員の採用、一部行員への平均10%の時給アップが投資計画に含まれる。 ●ウェルズ・ファーゴ  2月23日のウェルズ・ファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)の株価の終値は、59.17ドル。S&P500と比較すると、過去5年[WFC +62.1%、S&P500 +78.1%]、過去2年[WFC +18.1%、S&P500 +40.6%]、過去1年[WFC +2.4%、S&P500 +15.9%]である。  ウェルズ・ファーゴは、3つの期間の全てにおいて、S&P500に対してパフォーマンスが劣後している。2016年9月から、ウェルズ・ファーゴは顧客に無断で数百万件の口座(預金、クレジットカード他)を開くなど、組織ぐるみの不正行為が次々と発覚した。トップも辞任し、交代した。  2月2日、米連邦準備理事会(FRB)はウェルズ・ファーゴに対して、リスク管理体制を立て直すまで資産の拡大を禁じるという業務是正命令を出した。(参照:FRB)  ウェルズ・ファーゴは融資残高を増やすことができないため、他の銀行に対して業績も劣後しそうである。ウェルズ・ファーゴは、60日以内に是正計画を提出し、FRBの承認を受けて初めて、資産(融資残高など)を拡大することができる。 ●シティグループ  2月23日のシティグループ(ティッカーシンボル:C)の株価の終値は、77.08ドル。S&P500と比較すると、過去5年[C +65.1%、S&P500 +78.1%]、過去2年[C +80.0%、S&P500 +40.6%]、過去1年[C +29.4%、S&P500 +15.9%]である。  上記、シティグループの株価推移とS&P500との比較から想像できるように、シティグループの株価は2年前から、ようやく上がり始めた。  1月16日、シティグループは2017年10~12月期決算および通期決算を発表した。(参照:2017年第4四半期の決算を発表)  最終損益は182億9900万ドルの赤字であったものの、特別項目を除く1株利益は1.28ドルと市場予想(1.22ドル)を上回った。

米国銀行株が上昇するか?

 3つの銀行を見てきたが、サンプル数を増やしても、組織ぐるみの不正行為を行ったウェルズ・ファーゴだけが例外であり、多くの銀行がJPモルガン・チェースやシティグループのように、業績がよくなってきている。  米国の主要銀行では、税制改革、政策金利の利上げに伴う米国10年国債利回りなどの長期金利の上昇、増配、自社株買いなどにより、株価が上昇する蓋然性は高いと考えられる。  米国銀行株は、株価と米国10年国債利回りとの相関が強い。短期的な米国銀行株の動きを見ると、米国10年国債利回りが高くなる時は、米国銀行株は上がりやすい。ただし、米国10年国債利回りが急激に上がっていくと、株式市場全体が下がり、米国銀行株も下がることはあるし、逆に、10年国債利回りが下がった時には銀行株は下がりやすいと予想できるが、現実には、株式市場全体が上がり、銀行株が上がることもある。また、利上げと言っても、歴史的には低金利水準である。  物事をシンプルに考えると、他の要因が無くても、利上げが続けば、貸出スプレッドが拡大し、銀行のEPSが増大するため、株価も騰がるのではないかと筆者は想定している。 <文/丹羽唯一朗>
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