国際法原則も人権も無視の東京入管の非道! 22歳のクルド難民女性が理由も示されず3か月以上拘束、収容所内で衰弱

「なぜこのような仕打ちをするのですか?」涙ながらに訴える母

ハティジェさん

涙ながらに娘の解放を訴える、メルバンさんの母親ハティジェさん

 会見では、メルバンさんの母親のハティジェさんが涙ながらに「娘を助けてください」と訴えた。ハティジェさんは「今日メルバンと面会した時、彼女の手は血まみれでした。ストレスのあまり壁をこぶしで殴りつけていたからでしょう」と語る。 「メルバンは昨年に結婚したばかり。それなのに夫と引き離されて、あまりに可哀そうです。なぜ、東京入管はこのような仕打ちをするのですか?」  これらの虐待とも言うべきメルバンさんの扱いについて、筆者は東京入管に事実確認をしようとしたが、「個別のケースにはお答えできない」という返答しか得られていない。

東京オリンピックが関連!? 増える難民申請者の強制収容

大橋弁護士

ハティジェさんとともに会見する大橋弁護士。日本の「難民鎖国」ぶりは、クルド難民に特に厳しいと指摘

 前出の大橋弁護士は「最近、仮放免の難民申請者やその家族が強制収容されるケースが増えています」と指摘する。 「以前は、難民認定されなくてもすぐに収容施設に収容したり、強制送還したりせず、仮放免を認めるなどの対応を入管側もしていました。ところが、ここ数年になって状況が変わってきたのです」(同)  なぜ、入管側は厳しい対応を取るようになったのか。一つのカギと言えるのが、2020年の東京オリンピックだ。人権派弁護士によるネットワーク「全国難民弁護団連絡会議」が情報開示した文書によると、平成28年4月7日付けで井上宏・法務省入国管理局長は、全国の入管支局や収容施設所長に「不法滞在者及び送還忌避者の大幅な縮減」を指示している。

難民認定せず、強制送還もできずに拘束を続ける東京入管

オーバーステイ取り締まり

東京オリンピックのための治安対策として、オーバーステイの取り締まり強化を入管トップが指示。難民申請者の拘束も増えている

 だが、迫害のおそれがあり帰国できない人々が難民認定及び在留特別許可を求めても、認められるのは全体の1%未満と極端に低い。まして、トルコ籍クルド人が難民認定されたケースは「過去に一度もない」と大橋弁護士は言う。トルコが親日国であることに加え、「対テロ対策で法務省がトルコの治安当局と協力関係にあります。それを、人権侵害をしているとしてクルド人を難民認定したらトルコ当局との協力関係にヒビが入る」(大橋弁護士)という事情があるようだ。  ただし、前出の織田さんが入管関係者に聞いたところ、現在は「トルコ籍クルド人の強制送還は行えない」のだという。それは、迫害の恐れのある人を強制送還してはいけないという国際法上の原則(ノン・ルフールマン原則)があるからだろう。送還できないのであれば、メルバンさんを拘束している意味はありません。一刻も早く解放してください」(織田さん)。 「平和の祭典」であるオリンピックのために人権侵害をしては、本末転倒だ。法務省・入国管理局は、織田さんらの訴えに答えるべきだろう。 ※本記事では、筆者がメルバンさん本人及びご家族の了承を得て実名・顔写真を公開しています。記事をSNS等でシェアするなどの場合を除き、メルバンさんの顔写真の無断使用は厳禁とさせていただきます。 取材・文・撮影/志葉玲
戦争と平和、環境、人権etcをテーマに活動するフリージャーナリスト。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、共著に『原発依存国家』(扶桑社)、 監修書に『自衛隊イラク日報』(柏書房)など。
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