「持っても地獄、売っても地獄」突然の返済停止から1か月「かぼちゃの馬車」オーナーの心中

トラブル対応に追われ、独立起業プランは白紙状態

 会社員を辞めて起業準備中のKさん(30代)も、かぼちゃの馬車の被害者だ。 「本来であれば、かぼちゃの馬車のサブリース賃料で、起業直後の不安定な生活を支える予定だったのですが……。今はシェアハウスの対応に追われて起業プランも白紙状態です」  Kさんが所有するかぼちゃの馬車は2棟。そのほか区分所有の物件も保有しているという。かぼちゃの馬車からKさんが得るはずだった毎月のキャッシュフローは40万円。しかし現在の収支はマイナス100万円を超える逆ざや状態に陥っている。前出のMさんとは別の販売会社から、Kさんは営業を受けている。 「弊社の社長がスルガ銀行の権限者と懇意にしている。9月は銀行の決算期なので、いま決断すれば3.5%の“有利な金利”でアパートローンを組める」と提案されたと語る。  その際、優遇金利の交換条件としてKさんに提案されたのが、3.5%のアパートローンとは別に、金利7.5%でフリーローン1000万円をスルガ銀行から借りることだった。  契約当日、スルガ銀行の担当者から、「(フリーローンの使途は)株式運用のためのMRFと記入してほしい」と、申込用紙に書く内容を具体的に指示されたという。 「とても手慣れている感じだったので、多くのオーナーがフリーローンをセットで借りているのだなと直感しました」(Kさん)  いわば不要なフリーローンを半ば強制的に押し付けられた格好で、Kさんは「優越的地位の濫用」だとスルガ銀行への不信感をあらわにする。 「問題発覚後、ほかのオーナーと情報交換をしましたが、金利3.5%は別に優遇されているわけでもありませんでした。販社の営業が物件を買わせるため、適当なことを言っていたのでしょう。1000万円は今も証券口座に入れてありますが、無駄に高金利を払わされており、倫理に反する行為なのでは」  さらにこう続ける。 「出版やセミナーを通じて、無謀なビジネスモデルを投資家に提案し続けたスマートデイズ社には怒りを感じています。その無謀さを見抜けず融資を続けたスルガ銀行も責任が問われる立場にあると考えます。融資ありきでプロとして適正な審査を行っていたとは、到底思えません」

新会社の引き継ぎプランに不満の声も

 かぼちゃの馬車の運営事業は、新設会社であるスプリングボード社がスマートデイズ社から引き継ぐことになる。  現在スプリングボード社ではオーナーへ新プランの提案をしているが、「物件全体の入居率に応じて、各オーナーにサブリース賃料が支払われるというものでした。これだと50%の入居率で私が手にする金額は十数万円程度。毎月50万円の返済には到底足りない」(前出Mさん)と、オーナーの期待とは程遠い提案となっている。  多くのオーナーの人生設計が狂うことになった、かぼちゃの馬車の投資トラブルだが、スマートデイズ社以外にも、サクトインベストメント社やゴールデンゲイン社が販売した新築シェアハウスでも同様に賃料支払いが停止している。  ほかにも類似のビジネスモデルでシェアハウスや簡易宿所を販売していた企業が存在するといわれており、いずれもスルガ銀行から融資を受けているとみられる。  今回の問題を受けてスルガ銀行では実態把握のため調査を開始しており、全容の解明が待たれる。 <取材・文/HBO取材班> ◆追記(3/16):その後、弁護士による弁護団が結成され、3月5日から相談窓口を設けている。問い合わせは下記まで。 スルガ銀行スマートデイズ被害者弁護団 〒160-0022 東京都新宿区新宿1-15-9 さわだビル5階 問い合わせ03-3359-0613(平日午前10時~午後4時)
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