ベトナムの路地裏にビジネスチャンスが生まれてる! その理由とは?

安宿街ブイビエン通りのヘムもかつてはなにもなかったが、今はたくさんの店がひしめき合う

 ホーチミンは地方都市でありながら、経済的には首都ハノイより大きく発展している。日本外務省の統計では、2011年の在留邦人数は全体で9313人。そのうちホーチミンの日本大使館領事部へ在留届を提出した人数は5164人だった。そして、最も新しい数字である2016年10月1日時点で南部には8827人の日本人がいる(全体は16145人)。  日本で言えば、大阪や福岡の方が東京よりもビジネスチャンスが大きく、外資もそちらに集まるようなものだ。  在住日本人に聞くと「ベトナム戦争時の南部は別の国だったこともあって商習慣が違い、企業や自営業者がベトナムを目指す場合、ホーチミンを真っ先に考える」のだという。実際に、日系に限らず外資の有名企業のほとんどはまずホーチミンから進出している。

様変わりするベトナムの「路地裏」

 筆者が初めて訪れた2011年、そんなホーチミンで小売店や飲食店を展開する場合、基本的に表通りで営業することが鉄則だろうことは見て取れた。  ベトナムは大通りと、大通りで囲まれたブロック型の地区で構成されるのが基本的な街の造りだ。そして、そのブロック内は路地が網の目に張り巡らされている。ハノイではこの路地をンゴー(NGO)、ホーチミンはヘム(HEM)と呼ぶ。  大通りはビジネスの場で、路地の中は生活の場になる。生鮮食品を売る商人や洗濯や生活用品の修理を生業にする人は路地内でも働くが、観光で来た外国人に関係するものは裏路地にはなにもなかった。

こういった昔ながらの商売しかなかったのがベトナムの路地裏だった

 例えばホーチミンの日本人居住区とも言われるレタントン通りも、日本語の看板が散見され、輸入雑貨店などで日本の食材が入手できるのは表通りだった。日本料理店もあり、夜は男性向けのカラオケ・クラブやスナックも見かけた。  これが、2017年に再訪したときは明らかに変わっていたのだ。  表通りに新たに店を出すケースのほうがむしろ少なく、家賃の安い路地内部で営業することが当たり前になっていた。ハノイのンゴーは相変わらずだが、ホーチミンのヘムだけが特に内部が賑やかになっている。

レタントン通りのヘムは入り口に看板があり、主要な店がわかるようにもなっている。これはベトナム人向けのヘムではあまり見られないサービス

 日本人の自営業者も、特に新規の経営者たちはヘムの中へ中へと入っていく。レタントン通りもヘムの奥にある飲食店が増えた。ヘムは狭いところでは幅が1メートルもあるかないかというほど。その狭い路地に赤提灯などが掲げられていると昭和のような雰囲気があり、意外にも居心地のよさを感じる。スナックやカラオケクラブも奥に入ることで、特に男性駐在員にとっては近所の人の目に留まることなく遊べるというメリットも生まれる。  これには「とある理由があるんです」とホーチミン在住の若手実業家が言った。
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なぜ裏路地でもビジネスが成立するのか?
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