スペースXを率いるイーロン・マスク氏 Image Credit: SpaceX/NASA
イーロン・マスク氏率いる宇宙企業スペースXは、2018年2月22日、人工衛星を使って宇宙から全世界にインターネットをつなげるという、壮大な計画の実現に向けた試験衛星の打ち上げに成功した。
「スターリンク」(Starlink)と名づけられたこの計画は、その詳細はまだ明らかになっていないものの、マスク氏肝いりのプロジェクトとして、陰ながら着々と進められている。
はたしてスペースXは、そしてマスク氏は、この計画でいったいなにを目指しているのだろうか。
マスク氏が宇宙から全世界にインターネットをつなぐという計画を明らかにしたのは、2015年のことだった。
現在、アフリカや東南アジア、南米をはじめ、北米でさえまだネット環境が整っていない地域があり、世界の全人口の約半数が、まだインターネットにつながっていないとされる。すでにブロードバンドが行き届いている日本のような国と、こうした国との間に生じる情報格差(国際間デジタル・ディバイド)は大きな問題となっている。
しかし、広大な草原や砂漠が広がる北米大陸や、小さな島が集まっている国、絶えず紛争が続き、そもそも水や電気すらまともに通っていないような国の津々浦々に、光ファイバーのケーブルを通したり、基地局を建てたりするのは難しい。
そこで生まれたのが、地球を覆うように多数(スターリンクは約1万2000機)の衛星を打ち上げ、宇宙からインターネットをつなぐ、「宇宙インターネット」というアイディアだった。
地上側に必要となるのは、ピザの箱ほどの大きさをもつ、数百ドルほどの価格ののアンテナのみで、これを介して、衛星と、PCやスマホなどの端末とをつなぐ。設置に大規模な工事は必要なく、また持ち運ぶこともできるため、理論上は世界のどこでも、たとえば砂漠や大海原の真ん中からもネットができるようになる。
宇宙インターネットのアイディア自体は1990年代からあったが、衛星の製造コストやそれを打ち上げるロケットのコストが高く、実現しなかった。しかし衛星やロケットのコストが下がったいま、ようやく実現の兆しが見えてきた。米国の連邦通信委員会(FCC)も、米国内における情報格差の解消手段として期待を寄せている。
情報格差がなくなることの価値、そしてネット人口が倍増することによるビジネス的な価値は大きく、その可能性は計り知れない。
多数の衛星によって世界中にインターネットをつなぐ概念図 Image Credit: Airbus D&S/OneWeb