金メダリスト・小平奈緒選手の表情を研究者が分析「尋常ではないプロ意識の高さ」

金メダルという相対基準と自分の中の絶対基準

 続いて、下記の会見動画(②)を観て、合わせて考えます。 ⇒【動画】はコチラ https://youtu.be/adDpKhEnHKA  会見動画4:34からの「どういうオリンピックになったのか、ちょっと教えて下さい」という記者の方からの質問に対し、小平選手は、 「そうですね、あの、ま、一言で言えば、バンクーバーオリンピックは成長だったなと。で、ソチオリンピックは、屈辱だったな」と答えています。  注目は4:50~4:56の発言と表情です。 「で、今回のオリンピックは、なんて言うんですかね。また成長なのかな」という発言中の4:51で「左の口角が引き上げられる(+「下唇が引き上げられる」)」+「視線が下に向かう」動きが観られます。 「片方の口角のみが引き上げられる」動きは軽蔑や優越感を意味します。  ただしこの動きに、「視線が下に向けられる」あるいは「頭が下に向けられる」動きが連動すると、軽蔑は自分に向けられている可能性が生じます。視線は感情が向かう方向性を意味し、下は自分に感情が向けられているときに起こります。  つまり、このときの小平選手の感情は、自己卑下の可能性が考えられます。  また4:53~4:55では「下唇を巻き込む」動きが2回観られます。これはマニピュレーターと言い、感情がブレているときに生じる動きです。  この発言中に時折り生じる「目を閉じる」動きは熟考だと考えられます。私たちは目を閉じたり、目線を逸らすことを通じて視覚情報をシャットアウトし、自分の思考に集中するのです。  4:55に焦点を絞ると、「また成長なのかな」という発言中に声のトーンが下がり、そして笑顔がすぐに消え、真剣な表情になります。 「かな」という自問表現も聞き取ることが出来ます。この3つのポイントから、今回の大会を「成長」と呼んでよいのかどうかに迷いを抱いている心理が推察されます。  ①②の動画の表情・動作・発言・声のトーンから総合的に判断すると、「今回の平昌オリンピックの金メダル獲得自体は誇らしい。しかし、これをゴールにしてよいか、いやこれはゴールではない、成長し続けられるだろうか、いやまだ成長できる」 そんな小平選手の心の揺れ動きが推察されます。 「金メダルという相対基準は満たした。しかし自分の中の絶対基準はまだ満たせていないかも知れない」こう言い換えても良いかも知れません。  小平選手の発言の随所からもプロ意識は十分に伝わってきますが、今回の表情分析を通じて、金メダルを獲得してもなお自分のパフォーマンスに100点をつけないという小平奈緒選手のアスリート魂に、改めて感銘を受けました。
女子スピードスケート500

JMPA代表撮影(岸本勉)

(※当記事の内容は、科学的に体系化された微表情理論に基づく筆者の見解であり、個人の言動について断定するものではありません) 参考文献 Medvec VH, Madey SF, & Gilovich T (1995). When less is more: counterfactual thinking and satisfaction among Olympic medalists. Journal of personality and social psychology, 69 (4), 603-10 【清水建二】 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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