アメリカのTPP復帰検討はブラフ! トランプに振り回された日本メディアの楽観報道を信じてはいけない

TPPの再交渉を喜ぶのは中国だ

 日本のメディアはトランプ氏の言葉に振り回されないことだ。もちろん米国のTPPへの参加が最終目標ではあるが、まずTPP11を予定通り3月に署名して固めることが先決だ。そして米国市場の大きな餌に目がくらんで、「揺さぶり」に動揺する参加国が出ないように警戒すべきだろう。  多国間交渉の合意は、各国の複雑に絡み合った利害を長い時間をかけた激しい交渉を経て調整して、微妙なバランスで成り立っている。いわば「ガラス細工」のようなものだ。一旦再交渉でパンドラの箱を開けると、際限ない交渉で収拾がつかず、漂流するのは明らかだ。  最も大事なことは、こういう混乱した事態になれば、喜ぶのは中国だ、ということだ。  今、中国は国家主導の経済モデルで世界の経済秩序に挑戦している。これがグローバル経済の最大の課題だ。これに日米欧が協力してどう取り組むか。(TPPの戦略的意味はそこにある。)  TPPには電子商取引のルールや国有企業への規律など、「仮想中国」を念頭に置いたルールが盛り込まれている。  従って早急に国際ルールになるよう固めることが最優先だろう。トランプ大統領はその本質を全く理解していないようだ。また理解しようともしていないようだ。日本としては米国の復帰への働きかけは行うべきだが、結果は全く期待できない。そこで今後は米国以外に参加をだんだん広げていくべきだ。アジアの国々はもちろんのこと、将来的には欧州の参加も視野に入れるべきだろう。  今は、中国の台頭によってこれまでの経済秩序が大きく変革する大移行期にあるという時代認識が必要だ。  本来、米国大統領たる者には、グローバルな経済秩序の将来像に思いを致した、深い戦略論を期待したいものだ。そうではなく、ビジネス取引のような次元の発想で、「駆け引き」戦術をとるしかできない米国大統領と付き合わなければならない。日本のメディアもその言動に振り回されているだけではなく、本質を見極めた報道を期待したい 【細川昌彦】 中部大学特任教授。元・経済産業省。米州課長、中部経済産業局長などを歴任し、自動車輸出など対米通商交渉の最前線に立った。著書に『メガ・リージョンの攻防』(東洋経済新報社) 写真/DonkeyHotey
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