名護市長選では、実は「基地容認」ではなく「基地不要」の民意が支持されていた?

「国とは一定の距離を取っていかないといけない」

しんじろう街宣

渡具知氏の応援のため、名護市で街宣をする小泉進次郎氏。基地政策については一切語らなかった

 水面下での密約や本音ベースの話はさておき、表向きの政策論争上は、渡久地氏当選で示された民意は基地反対66%の世論調査結果と一致したのだ。何よりもまず、渡具知氏本人が基地容認の民意を否定している。当選翌日(2月5日)に渡具知氏は自宅で記者会見を行い、「今回の選挙結果は、辺野古容認の民意であると考えているのか」との問いにこう答えた。 「そうは思っていない。私は今回、『容認』ということで臨んだわけではない」 「複雑な民意だと思います。私を支持した人には辺野古移設に反対の人もいる」  また小泉進次郎氏(自民党筆頭副幹事長)が2回も入るなど国会議員が続々と応援で現地入りしたことから「自民党から支援を受けて『どこまで辺野古移設問題について言えるのか』という不安もあると思うが」との質問も出たが、それでも渡具知氏は「国とは一定の距離を取っていかないといけないと思います」と答えた。「新基地推進の安倍自民党の支援=基地政策での迎合」という見方をこの時点では否定したのだ。  推薦した公明党の立場にも変わりはなかった。2月4日22時過ぎに当確が出た後、渡具知氏と抱き合った金城勉・公明党沖縄県本部代表は、報道関係者で溢れ返る選挙事務所でこう述べた。 「(政策協定に盛込んだ)海兵隊の県外国外移転と日米地位協定改定を求める立場は維持する」

渡具知氏は「稲嶺市長時代と(基地政策は)変わらない」と言うが……

 市長選の告示日(1月28日)、渡具知氏の出陣式での挨拶を終えた金城氏を記者が直撃した時も、「渡具知さんが当選した場合は稲嶺市長時代の基地政策が変わるのか」と質問に対して、「変わりません」と断言したのだ。  もちろん、もともとは基地容認派の渡具知・新市長が市議時代の主張に戻って、公明党との政策協定を破棄して自民党に迎合する可能性はある。かつて仲井真弘多・知事(当時)が公約を翻して辺野古の埋め立て承認を行い、沖縄県民の支持を一気に失ったのと同じ道を辿るというわけだ(その結果、仲井真氏は2014年の県知事選で惨敗)。 「もし渡具知市長が基地容認の態度を見せれば、裏切られた公明党支持者(創価学会員ら)が激怒してリコール運動に発展することも考えられるでしょう。稲嶺派が過半数を占める市議会での追及も確実。基地政策で正反対の立場の自公両党の推薦を受けて当選した渡具知市長にとって、これからが試練なのです」(地元記者)。  今後も、辺野古新基地建設を左右する名護市・渡具知市政から目が離せない。 <取材・文・撮影/横田 一> よこたはじめ●ジャーナリスト。著書に『新潟県知事選では、どうして大逆転がおこったのか』(七つ森書館)『検証・小池都政』(緑風出版)など
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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