<JR北海道の試練1>留萌~深川路線の営業係数は1500。人口減少も追い打ちをかける

無人駅

このような無人駅も珍しくない、JR北海道の路線。

 昨年、北海道出身で苦闘の末将棋のプロ棋士になった石田直裕四段(当時)の記事を三回に分けて掲載した。(参照:『「子供を藤井聡太にしたい親」への助言――石田直裕四段の例に見る』ほか)  その後石田四段は規定により昇段を果たして五段となった。  その石田五段がプロに至るまでに経てきた苦悩を語るうえで、どうしても外せない問題がある。それは、「JR北海道問題」である。  これが関東一帯の話であれば、問題でも何でもない。たとえば、将棋界にも群馬県出身の棋士が二人いる。藤井猛・三浦弘之両九段である。三浦九段は高崎出身だが、仮にご両親が送迎したとしても、せいぜい自宅・学校からJR高崎駅までだろう。片道20分とか、30分でおさまるはずだ。  しかし、石田五段の場合はそうはいかない。地元・名寄の中学から最寄りの旭川空港まで片道約2時間、東京からの帰りはもう旭川便がないので新千歳まで片道四時間、つまり往復8時間ということになる。到底、中学生一人で往復できる距離ではない。  そこで今回、筆者が体験したJR北海道の実情について報告したい。

大部分の路線を辞めたがっているJR北海道

 筆者が生まれて初めて北海道の地に降り立ったときの話だ。初めてなので土地勘は全くない。札幌での待ち合わせも泊まるホテルも札幌駅近くで迷いようのない場所にした。  待ち合わせをしたのは北海道議会議員の浅野貴博氏(新党大地)である。  長年、鈴木宗男氏の秘書を務めたのちに政治家に転身、2015年に留萌地区から立候補、道議会議員に初当選を果たした。ジャーナリスト活動をしながら政治家を「友人」と言うのはどうかと思うが、ほぼ同世代ながら政治信条は全く正反対ということもあり、面白いので付き合いが続いている。
浅野貴博氏

北海道議会議員、浅野貴博氏(左奥)と筆者ら

「今でもJR北海道は利用客の減少が止まらなくて大部分の路線の運営をやめたがっているんですよ。はっきり言って大部分が赤字路線ですから」  浅野氏はそう切り出した。 「見たところ、札幌近辺以外は全部赤字なんでしょうな……」  筆者は相槌を打った。 「いや、札幌近辺ですら赤字です。札幌駅と新千歳空港間の路線、みんながみんな乗るでしょう。でもあそこで百円の利益を上げるために必要なコスト、これを営業係数(※)というのですが、タカさんこの路線の営業係数がいくらか想像つきますか? 実は、だいたい105らしいんですよ」 (※営業係数……100円の営業収入を得るために、どれだけの営業費用を要するかを表す指数。)  要はこの路線でさえ赤字ということだ。これではほかの路線が黒字になりようがないではないか。 「では、私の選挙区である留萌と深川を結ぶ路線の営業係数はどうか? 1500を超えていると言われています」  経営や数字に暗い筆者でさえも頭がくらくらしてしまいそうな数字である。 「今から約30年前の分割民営化の際、もう北海道が赤字になることは明らかだったので、運営基金として約6600億円をもらい、それを諸々で運用して498億円の運用利益を出せれば、なんとか事業が成り立つという試算だったのですよ。でも当時の想定金利が7%だったのですよ。そんなの今時なるわけないじゃないですか。だからもはやこんな小手先の運用で赤字の穴埋めはできないところまで来てしまっているのです」
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北海道の人口は5年で30万人減少
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