タイでJリーグ時代の数倍を稼ぐ下地奨、スペイン視察で得た知見を語る

国ごとにチームを作るというのは、それ自体が“政治”そのものではないのか

 筆者もときどき同じことを考える。早い話が、純粋な器量や実力だけを問うなら最強チームはチャンピオンズリーグ優勝クラブに決まっている。お互いに毎日一緒に練習しているクラブが国境の枠を超え、大金も賭けて争った結果なのだから当然だ。

 それに対して、国家代表というのは言ってみれば“寄せ集め集団”である。国籍は同じでも、普段は一緒にやっていない、試合の前後数日だけ集まって解散を繰り返すチームなのだ。

 にもかかわらず、老若男女を問わず最も熱狂するのは国家代表同士がぶつかるワールドカップではないか。国ごとにチームを作るというのは、それ自体が“政治”そのものではないのか。

「現にアスレティック・ビルバオなんて未だにバスク人の選手しか入れないわけでしょう。日本にもそういうクラブがあってもいいと思うんですよ。真面目な話、FC琉球がそうなってくれないかなと思いますよ。おれみたいな苗字やバックグラウンドの選手が選ばれるだけでも、クラブの印象って変わって面白いですよね……」

 下地は両親が沖縄出身である。「下地」姓自体が宮古島近くの「下地島」から来ている。笑い事ではなく、FC琉球が方針転換した際には、真っ先に声をかけるべき存在だろう。

「結局ね、選手とクラブの関係って言ってみれば絶対にかなわない片想いみたいなものなんですよ。どんなに選手がクラブのことを想っていても、結果が出なければ必ず捨てられる。それが宿命ですからね。だからこそ、それくらいとんがったクラブがあったほうが面白いんじゃないですか」

 かつてルイス・フィーゴという偉大な選手がいた。彼はバルセロナFCで不動の地位を築いていたが、レアル・マドリードから五倍の年俸を提示され、移籍をした。それで「裏切者」だの「銭ゲバ」だの散々に言われたが、彼は何か間違ったことをしたのだろうか。

 そもそもフィーゴはポルトガル人で、カタルーニャ人でもスペイン人でもない。なぜに、「十五年間私は一つのクラブで過ごしてきたが、その間に十人のチームメイトが有無を言わさず放出された」(本人談-“白の軍団 ベッカムとレアル・マドリードの真実”より)クラブに忠誠を誓わなければならないのか。プロに対する評価、プロへの誠意はお金しかない。

 今回17歳のサッカー少年と共にスペインへ行き、下地は感慨深いものがあったという。

「今回あの子を見てて、若いっていいなと改めて思いましたよ。今後どのようにも目標設定できるじゃないですか。実際、彼が成長していれば映像はクラブ側が見てくれるので来年バルサのカンテラ(下部組織)の練習にも参加できるという話みたいです。サッカー選手でも上はメッシから下はJFL、あるいはタイの四部リーグの選手とかいて全部一応“プロ”なんですよ。」

「メッシは十歳のころに世界一を目指し始めていたけど、僕らが十歳のころってせいぜいJリーグを目指していたわけですよ。この差は十年たつと大きいですよね。だからいつまでにどこまで行きたいのか決める、それがダメなら別の道に進むのも一つの勇気ですよね。三十半ばになっても歌手になりたいと言いつつ歌手として稼げていない人は、一見夢を追いかけてカッコよく見えるけど、一番カッコ悪いですよね。その意味で、ダメなら26歳で諦めさせる将棋って正しいと思いますよ」

 そして滞在中に会った人物からも強い印象を受けたのだという。

「泊まった家で六十くらいのおじいさんがいましてね、幸いオレ未だに結構スペイン語を覚えていたみたいで話せたんですけど、“バルセロナは若い働き手がいなくて、老後が不安なんだ”とか言うわけですよ。なんだ、日本と同じじゃないか、と。観光客は溢れているけど、若い働き手が外国に行ってしまうみたいですね」

 次回は、下地が昨年直面した人生最大の危機の一つ「ギャラ未払い問題」のその後について掘り下げていきたい。

【タカ大丸】
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。
 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト


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