小室哲哉も直面した現実。高次脳機能障害の介護とは“同じ環境を維持し続けること”

高次脳機能障害を抱えた人にとって、最たる恐怖は「環境の変化」

 あれから14年。その間、工場を閉じ、筆者は家を離れ、妹も家庭を持った。父の記憶力は半日ほどにまで伸びたものの、実家では母が父を置いてどこへも行けない状態が続く。  そんな現実を父自身も察しているようで、旅行好きの母に合わせて外出するのだが、結局母は旅行先でも父の世話に追われ、周りの景色をゆっくり楽しめていない。  筆者は海外で好き勝手させてもらっている代わりに、半年に一度実家へ戻り、少しの間でも母に「ひとりの時間」を過ごしてもらおうとするのだが、やはり父が心配になるのか、近くのスーパー銭湯で1泊するとすぐ帰って来てしまう。  こうした「完治しない」平行線の生活が長く続くと、それはもはや「介護」というよりはむしろ「監視」に近い状態となり、するほうもされるほうも疲弊していくのだ。  KEIKO氏は、決して「闘病中」なのではない。  先述通り、高次脳機能障害は、症状が軽くなることはあっても、完治することはほとんどとない。まだ若い彼女には、周囲による介護と、症状・感情レベルに合った根気強い“教育”が必要となる。  小室氏のSNSに登場したKEIKO氏から察するところ、恐らく彼女の症状は紹介した父の症状よりも重く、今回小室氏が犯した件を完全に理解すること自体も難しいのではないだろうか。  不倫はパートナーに対して断じて許されない行為ではある。  特にKEIKO氏が、小室氏が2008年に起こした詐欺事件の後も彼のそばにい続けたことを考えると、今回の小室氏の行為はたとえ世間で定義されるような不倫ではなかったとしても、恩を仇で返す裏切り以外のなにものでもない。  しかしその一方、子どもに戻ってしまった妻を24時間介護する小室氏の心情を思うと、会見での発言には納得できずとも、個人的には「寂しさに負けてしまったんだろうな」と、どこか理解してしまう部分もあるのだ。  高次脳機能障害をかかえた人にとって、最も恐怖なのは「環境の変化」だ。今までずっとそばにいた人がいなくなったり、経済レベルが急変したりすれば、当事者はそれに対応できず、パニックに陥る。  小室氏が今後KEIKO氏にできることは、引退でも離婚でもなく、昨日と同じ今日で明日を迎えることだと筆者は思う。 【橋本愛喜】 フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。その傍ら日本語教育やセミナーを通じて、60か国3,500人以上の外国人駐在員や留学生と交流を持つ。ニューヨーク在住。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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