ネットを通して、投資家と資金を借りたい企業を結ぶ「ソーシャルレンディング」(以下、SL)。国内では’08年に「maneo」がサービスを開始すると、右肩上がりに急成長。現在、事業者数は20を超え、’17年の市場規模は1000億円を突破する見込みだ。
初心者でも1万円程度から投資でき、運用期間も数か月から3年程度と短いSL。期待利回りは5%以上と高水準で、中には10%超の高利回り商品もあるという。まずはそんなSLの基本的な仕組みをおさらいするべく、SL専門の比較サイト「クラウドポート」の藤田雄一郎氏に話を聞いた。
「SLはクラウドファンディングの一類型で、募集を行う事業者が投資家から小口の資金を集め、それをまとめることにより、大口化して企業に貸し付けるシステムです。投資家は元金に加え、利息の一部を受け取ることで、利益を上げる仕組みになっています」
’16年の段階でアメリカでは約3.6兆円、中国では約7.3兆円の市場になっているという。
「SLのいいところは、投資初心者も経験者もそれほどパフォーマンスに差が出ない点です。株やFXのように、日々の値動きがあるわけではないですし、運用期間中は売買することもない。利回りも高く、現在業界の平均は約7%(目標利回り)となっています」
では、具体的にどのような商品が扱われているのだろう?
「国内外問わず、不動産系商品は人気です。例えば古民家の再生。再建築不可な物件や、建物のリフォーム費用には銀行融資がつきにくい。そこでSLで資金を調達し、リノベーションや建て替えを行い、価値が上がった状態で売却するんです。その売却益で投資家に償還を行う商品が増えています」
高利回りの商品では、再生可能エネルギー関連が人気だ。
「例えば太陽光発電所は、土地の担保価値が低い郊外に造ることが多い。そのため、銀行融資がつかず、建設資金がなかなか集まらないんです。一旦、完成してしまえば電力の買い取り制度があるので、銀行からの融資がつきやすくなる。そこで、開発期間中はSLで集めた資金を活用し、完成後は金利の低い銀行融資に乗り換えるという案件があります」
「銀行融資が得られない」と聞くと、ベンチャー企業の運営資金などに使われているのではないかと思ってしまうが、そういった商品は少ないという。
「しっかりとした担保や、融資金額に見合う資産を持っていなければ、基本的にSLで融資を受けるのは難しい。そもそもSLは貸し出し金利が高いので、長期の運営資金にはあまり向いてないんです。先ほどの不動産や発電所のように、完成後の“出口”、つまり売却先が見えている商品がほとんどです」
最近は担保付きの商品も増えている。まずはそういった商品を試してみるのもいいだろう。