180億円規模のドーム大改修! 西武ライオンズが描くビジョン

 株式会社埼玉西武ライオンズがメットライフドーム周辺の改修計画を発表した。約180億円という規模からは、球団のみならず、西武グループ全体の意気込みが感じられる。この改修を通して、球団がどのようなビジョンを描いているのか直撃した。

完全ドーム化も検討されていた

 2018年は埼玉県所沢市へ本拠地を構えてから40周年の節目の年。これまで大きな投資ができていなかったこともあり、選手寮や室内練習場といったインフラが老朽化していたことも改修に踏み切った要因だという。 「約3年前から検討を始め、ようやく計画がまとまって発表させていただきました。メットライフドーム周辺のエリアは一般的に市街化調整区域となっているので、何かを開発したり、建設するときには行政と相談する必要があります。特に今回の改修は大規模かつ、広範囲に及ぶものなので、ひとつひとつやり取りをしながら進めていくうえで、時間がかかってしまったんです」(経営企画部長・光岡宏明氏)  ライオンズはもちろん、他球団のファンの間でも話題となった今回の改修。だが、発表に至るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。 「ファンの皆様からは、施設面においていろいろご意見を頂戴していましたし、ネット上での反応も十分認識しておりました。ただ、地域の特性もありますし、検討していくうち、場当たり的にひとつずつ改修しても、対処できないということがわかったんです。結果的には3年かかりましたが、ファンの皆様と選手、それぞれに対してしっかりしたプランを提示することができたと思います。ドーム内が『暑い』『寒い』というご意見も同じで、実は完全ドーム化も検討していました。しかし、法令対応なども含め、実現しようとすると、もうひとつドームを造れてしまうほどの予算がかかる。さらに野球興行を行いながら工事ができるレベルではないため、工事期間中はメットライフドーム以外の場所で興行を行う必要があり、現実的な案ではありませんでした。であれば、今あるいいところに着目していこう、と。これだけドームの外に広がりを持った球場はほとんどないので、そこに我々は可能性を見いだしました」  グルメやイベントなど、球場を中心としていかに野球以外の娯楽も楽しめる空間を生み出せるか……。近年、野球界のキーワードのひとつとなっているのが「ボールパーク」だ。国内では球場内に観覧車やメリーゴーランドを設置した楽天生命パーク宮城(東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地)などが、いち早くその流れを取り入れている。ライオンズは絵空事のような漠然としたプランを描くのではなく、自然共生形というある意味で地に足のついた計画を進めていくこととなった。メジャーリーグのスタジアムや、国内でも似た地域性をもつ球場を視察するなど、マーケティングには力を入れたという。 「地理的な特徴と市場規模に関しては特に注目しました。国内でも都市のド真ん中にあるものに関しては、あまり比較対象にならないということで、ビッグマーケットに近接している球場がどういった取り組みをしているか、それがどう施設に反映されているのかをリサーチしました」  こうして外周エリアの拡張、飲食店などのインフラ増強を打ち出したライオンズ。はたしてどのような効果を見込んでいるのだろうか?
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