中国人観光客が韓国より日本を選ぶように。その要因は「爆買い」から変化した中国人の旅行目的にあり

 昨年11月末に8か月以上にわたり禁止となっていた中国人の韓国への団体旅行が緩和されたものの3週間後の12月20日に再禁止となり禁止のまま2018年を迎えた。  中国政府は昨年3月15日から韓国に配置された「THAAD」(終末高高度防衛ミサイル)への報復処置として韓国への団体旅行を全面禁止している。  韓国メディアは、中国人の団体旅行禁止処置が解禁となるも今年1月から再び禁止となると大々的に報じたが、中国の旅行会社へ取材すると少し違っているようだ。 「一時的に禁止が解けたのは北京と山東省の旅行会社だけで、あくまで一時的な緩和として3週間後の12月20日に再禁止となっています。そのため中国全土的には全面禁止が継続されていると認識されています。なぜ、一時的に緩和されたのかは定かではありませんが、業界内では昨年12月中旬に訪れた韓国の文在寅大統領へのリップサービスだと言われています」(中国深センの旅行会社)

劇的に変化する中国社会に疲弊した中国人が日本に癒やしを求める

 文大統領の訪中に期待していた韓国ビジネスを手がける朝鮮族経営者は、中国側の扱いを見てすぐに冷遇されていると感じたといい、文大統領帰国直後の再禁止に、大統領の訪中はまったく意味がなく、韓国側は妥協案まで約束したのに恥をかいただけと肩を落とす。  ただ、都内で中国人向け観光サービスを提供する旅行会社を運営する秦氏は、中国が、もし仮に韓国への団体旅行を全面解禁しても2、3年前ほどの中国人訪韓者数には戻らないだろうと話す。  その理由は、中国人の旅行目的の変化だという。

激動の中国情勢に疲弊した中国人が旅に求めるもの

 さて、中国人の団体旅行が制限されているのは韓国だけではない。日本も10月から制限されているはずだがあまり中国人観光客が減ったという声が聞こえてこない。日本の場合は、韓国のように全面禁止ではなく、地域ごとに制限範囲に幅があるという違いもあるが、実は各旅行会社が、団体ビザを個人ビザに切り替えを進めるなどして事実上の訪日ツアーを組んでいるのである。  ただ、こうした中国人の旅行自体も、先述したように目的に変化が生じている。  中国人の旅行目的といえば、御存知の通り、「爆買い」で知られる買い物が旅行のメインディッシュだった。もちろん、これは今でも大きくは変わらないのだが、実は意識に変化が生じているという。 「中国社会は変化が早すぎてついていくためには激しい競争の波に身を晒す必要があり、疲れてストレスを感じる人が急速に増えています。特に海外へ行けるような中上流と呼ばれる層だとなおさらです。そのため最近は、きれいな空気を吸いたい『洗肺』だったり、癒やしを求めて旅行する人が増えています」(秦代表)
次のページ
これからの中国人向けインバウンド戦略は?
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会