食事を終え、さっそくメインイベント(?)である会計へ。
iPadの「TO PAY 支払実行」と書かれたボタンを押すと、スタッフが席までカードリーダーを持って来てくれる。
カードリーダーは楽天ペイのもので、会計額はそれに繋がれたiPhoneに表示される。iPhoneには「割り勘」額を表示するためのボタンも見えた。会計に使えるのは大手各社のクレジットカードはもちろん、電子マネーは「Suica」「ICOCA」などの交通系、セブンアイの「nanaco」、そのほか、「QUICK Pay」、「Apple pay」、「Android Pay」、そして「楽天Edy」など多岐に亘り、国内に広く普及しているもので使えないのはイオンの「WAON」くらいだ。また、このほか楽天カードポイントペイサービスを使えば楽天スーパーポイントでの支払いも可能であると思われる。ちなみにスタッフによると「クレジットカードと電子マネーの支払い比率は半々くらい」とのこと。
なお、電子マネーは店内でチャージできず、事前にチャージしておく必要があるため注意が必要だ。(向かいのデニーズでnanacoをチャージすることもできるが流石にライバル店のためのチャージは頼みづらいため、最寄りのチャージ場所は馬喰町駅だろうか。)
会計はスムーズで、レジに並ぶ必要もないため非常に快適なものであった。
ただ、スタッフが席に出向いて会計するかたちになるため、混雑時にはスタッフや端末が足りなくなることも予想される。
「ギャザリング・テーブル・パントリー」の仕組み(ロイヤルHDニュースリリースより)
効率面、衛生面…とくに「利点が大きい」飲食店のキャッシュレス化
さて、ここまでの体験記で述べたように、ファミレスのキャッシュレス化は企業、スタッフ、そして客にとってみてもいいことづくめであるといえる。なかでも、最も大きな利点は「閉店後のレジ締め作業が大幅に簡略化できる」ことであろう。
飲食店では、閉店後に売上金額と現金在高が一致するかどうかを確認する「レジ締め作業」がおこなわれることが一般的であるが、このレジ締め作業は意外と手間と時間がかかる。売上の多いファミレスであればレジ締め作業に1時間前後を要することもザラで、しかも万が一、売上と現金が一致しないときには店員が自腹を切るということも少なくない。
しかし、キャッシュレス化をおこなえばこうしたレジ締め作業は必要なくなる。勤務する側にとってはレジ締めがないことで閉店作業が大幅に楽になるうえ、企業側は人件費の削減にも繋がり、それはメニューの価格にも還元されることになる。もちろん、スタッフが営業中に現金に触れなくて済むことは衛生面からみても好ましいことで、飲食店のキャッシュレス化は非常に「利点が大きい」のだ。
昨今「キャッシュレス化が進んだ世界」といえば中国を想像する人も多いであろうが、世界のキャッシュレス化はますます進展を見せており、中国よりもさらに現金利用率の低い北欧諸国では、政府主導のもとで現金自体を廃止する動きさえ出てきている。
日本ではこうした動きはまだまだ考えられないことであるが、都市部では人手不足も深刻であり、こうした「キャッシュレス店舗」は今後増えていくことになるであろう。
もし馬喰町を通りかかった際には「ギャザリング・テーブル・パントリー」へと足を運び、気軽に「近未来のファミレス」を体験してみてはどうだろうか。
夜は比較的静かな雰囲気となる日本橋馬喰町の衣料問屋街界隈。ギャザリング・テーブル・パントリーの営業時間は22時半までで「気軽なバル」としても楽しめる
<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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