セクハラ問題で揺れる米国社会でクローズアップされる、IT業界の「雰囲気モデル」とは

水次祥子
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※写真はイメージです photo by Concord90 via Pixabay(CC0 Creative Commons)

 年末年始は米国もパーティシーズン真っ盛りだが、その華やいだムードの中で気になるニュースが伝わり、世間の注目を集めている。

 米経済ニュースメディアのブルームバーグが12月上旬に発表した調査によると、米国のIT企業各社がこの時期行う会社主催のパーティでは、モデル事務所から何人ものモデルを派遣させ、サクラとして参加者させるケースがここ数年で記録的な頻度に上っているのだという。(参照:「Bloomberg」)

 例えばある週末、サンフランシスコに本拠地を置くゲーム制作会社のパーティで、Cre8エージェンシーというモデル事務所に依頼されたのは女性25人、男性5人の派遣。モデルだけあってもちろん全員が美形なのはいうまでもなく、パーティという場に相応しい社交的な雰囲気を持つ。

 彼らと彼女たちの仕事は、ただパーティに現れ、依頼企業の社員である参加者たちと楽しく会話をすることだ。モデル1人につき、時給は50ドルから200ドル。企業は事前にモデル事務所からモデルたちの写真を取り寄せ、その中から選んだモデルたちとパーティに参加するよう契約を交わす。

 契約書には、パーティで自分が雇われたモデルであることを知られてはならないという「守秘条項」が盛り込まれており、社員の知人に誘われて参加したと説明するように指導され、知人として使っていい社員の名前も伝えられる。企業によっては、雇った女性モデルたちにミニスカートをはいてくるよう求めるケースもあるという。米国ではこのようにパーティの雰囲気作りを目的として雇用するモデルを「atmosphere model(雰囲気モデル)」と呼んでいる。

実は男性優位社会だった米IT業界

 IT企業が会社主催のパーティに雰囲気モデルを参加させるのは、これら企業が圧倒的な男性社会であるという背景がある。米国政府が昨年発表した国勢調査によると、ハイテク業界における雇用者のうち女性は35.68%と、米国内全業種全雇用者の女性の割合48.16%と比べると低く、これがエンジニアのような技術職となるとさらに低い。大手検索エンジンの米国Google社は、女性雇用者が31%、そのうち技術職では女性がわずか20%だという。女性進出を業界として奨励はしているものの、ほとんど進まないというのが現状だ。

 特に雰囲気モデルを雇うことが当たり前の慣例になっているといっても過言ではない状況なのがゲームソフトメーカー各社で、従業員がほとんどgeek(ギーク)、いわゆる「オタク」と呼ばれるタイプの人々であるため、パーティの雰囲気作りにモデルたちの存在が欠かせなくなっているそうだ。パーティ好きの米国人にとっても会社主催のパーティは退屈で窮屈なものという感覚が強いそうだが、そんな堅苦しいパーティでしかも参加する社員が男性ばかり、しかもギークばかりという状況に少しでも華やかさをと考えた結果が、雰囲気モデルの雇用というわけだ。

 しかし米国でセクハラ問題が大きくクローズアップされている今、雰囲気モデルを雇用するという慣習はいかがなものかという声が上がっている。雰囲気モデルを雇う、女性を「華」として扱うという姿勢こそが、IT企業への女性進出を妨げているのではないかとの批判も出ている。

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ギークなIT業界が悪いのか?派遣する事務所が悪いのか?

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