ベンチマークはZOZOTOWN 成長可能性を検討する定性分析
ここで井村氏が参考にしているのが、ファッション通販サイトZOZOTOWNの急成長で、株価を5年で15倍にしたスタートトゥデイだ。
「同社のここ数年の売り上げの伸びは年30~40%ほどで、PERは約50倍。これよりも売り上げの伸びがよかったり、PERが低ければコスパがいいと判断します。そうでなかったらスタートトゥデイに投資したほうがいいわけですから」
第二段階は、候補銘柄の事業内容やビジネスモデル、競合などを調べてその成長可能性を検討する
定性分析だ。企業サイトはもちろん、社長インタビューやアナリストリポートを検索したり、消費者向けサービスなら自分でも利用してみる。
「正直、この段階は勘頼みで、いいなと思ったらその日のうちに投資してしまいます。好決算の発表直後なのでストップ高になっていることもありますが、気にせず買いに行きます」
井村流投資の極意は、思い切った集中投資にある。資産が億超えした今でも、一度に保有する銘柄は3~4銘柄程度だ。
投資人生で最大の利益を上げた銘柄が、SNSのマーケティング支援を手掛けるアライドアーキテクツ(6081)だ。’16年5月に発表された決算を見て、当時の資産の3割程度となる1500万円を投入した。
「フェイスブック社から表彰されるほど評価されていた海外事業に成長性を感じました。保有中に何度か大きな下落に見舞われて迷いましたが、海外事業が伸びている間はナンピンや買い増しを続けました」
成長可能性がある限り、保有を続けるのが井村流だ。そのかいあってその含み益は一時4000万円超に達した。そして売却の決め手となったのも決算発表だった。
「以前は決算説明資料に海外事業について売り上げの伸びなどのデータを載せていたのに、その期は情報が極端に少なく、違和感がありました。売り上げの伸びに対する粗利の伸びも悪くなっていたので、これは苦戦しているなと判断したんです」
天井で売れたわけではないものの、1銘柄で3000万円超の利益。入念な銘柄研究と、成長を信じる限り握り続けるグリップ力の賜物だ。時には大きな含み損を抱えることもあるが、そんなときほどその銘柄について調査研究し、撤退や買い増し、様子見といった選択肢から慎重に検討するという。
【一銘柄での最高利益は3000万円超!】毎日の決算チェックで出合い、当時の資産の約3割を投じたアライドアーキテクツ(6081)。3倍弱に急騰したのち半値まで暴落しても動じず、逆に買い増しする驚異のグリップの強さで3000万円の利益を達成
ちなみに、12月中旬時点で保有している銘柄は元気寿司(9828)、GameWith(6552)、SBIホールディングス(8473)、アルファポリス(9467)の4銘柄。すでに大きな含み益が出ているものもあるが、慎重に監視中だ。
井村氏は’17年に芸人を引退し専業トレーダーとなったが、自分が管理できない量まで保有銘柄を増やすことなく、常に監視を怠らないその手法はサラリーマンでも十分マネできる。来たる’18年は井村流投資で資産100倍投資を狙ってみてはいかがだろうか。特に、大きく稼いでも税金のかからないNISA口座での運用に向いた手法といえる。
《直近の購入例》
●元気寿司[9828]
回転しない寿司店「魚べい」が主力。「注文制なので廃棄ロスが少ない。他の回転寿司チェーンと比較しても競争力がありそう」(井村氏)
●GameWith[6552]
同名のゲーム攻略情報メディアサイトを運営。「高品質な記事を内製し、PVは月間9億。需給に不安はあるが、決算に期待」(井村氏)
取材・文/森田悦子 図版/松崎芳則(ミューズグラフィック)