
日本人観光客からは意外と英語が通じるといった反応も出ている
実際にポーランドに行った観光客の声を分析したJATA(日本旅行業協会)の報告書のなかでは、親日的、安全、清潔、意外と英語がよく通じるという意見が多かったという。また、ワタ氏は日本でのポーランドに対する知識がまだ浅いことが、今後の観光面での伸びしろに繋がるのではないかと期待を寄せる。
「ポーランドの西側にはドイツ、フランス、スペインと大きな国が並んでいますが、人口と面積で一番近いのはスペイン。日本ではポーランドと言うと小国のイメージがありますが、誰もスペインを小さな国とは考えませんよね? ポーランドの国土は南にあるチェコ、スロバキア、ハンガリー、オーストリア、4つの国を合わせたのとほぼ同じ大きさです。比較的大きめな国で、中欧のほかの国にはない海があるので、観光資源はとても豊富です」
こういった観光資源をアピールする招致活動は一定の効果を生んでいるようだ。10年ほど前までは日本からのパッケージツアーでは、チェコやハンガリー、オーストリアなどをまとめて巡る商品が主だったが、最近ではポーランドのみを旅するものが増えているとか。
「以前のツアーカタログを見ると他国との組み合わせが非常に多かったのが、今は逆に8割以上がポーランドのみを回るコースになっています。また、そういうコースでは7~8日間の日程で旅するケースが多いですが、他国と組み合わせるとポーランドは2泊3日程度になってしまい、ともに世界遺産の歴史地区を持つ首都ワルシャワや古都クラクフは入っていても、ほかの都市には時間が足りなくなります。ポーランドだけを巡る商品が増えたことで、旅行者の国全体への関心と知識はかなり増えたと思います。実際に当局への問い合わせも、トルンやグダニスク、ヴロツワフやポズナンといった地方都市についての質問が増えています」
旅行者の趣向と滞在日数の変化によって、メジャーな観光都市以外にも目が向けられるようになったポーランド。情報量が増えたことで、個人でも“通”な旅行者が訪れるようになった。

若い女性から注目されているポーリッシュ・ポタリー
「今、日本の若い女性の間で小さなブームになっているのがポーリッシュ・ポタリー、ボレスワヴィエツという町で生産している陶器です。これを買いたいとはるばる現地まで出かける個人旅行者も結構多く、グループツアーにもこの町を取り入れているものがよく見受けられるようになりました。また、JATA(日本旅行業協会)が選ぶ『ヨーロッパの美しい村30選』に入った、ザリピエ村は、民家や井戸、犬小屋や消防署、教会などあらゆる建物の外壁や室内に色鮮やかな花模様が描かれていることで知られています。この華麗なウォールペイントは村の女性たちが描いているもので、年に1度ペイントの美しさを競うコンクールが開催されています。この村も日本人旅行者の間で非常に人気が高くなってきており、旅行会社の企画でも注目されるスポットになっています」

ウォールペイントで知られるザリピエ村
航空券や宿泊先を簡単に予約できるようになった今、直通便というインフラはこれまで以上にビジネス、観光、文化面で大きな効果を発揮するようになった。20年越しに壁を乗り越え、国と国とが直接結ばれた日本とポーランド。今後、お互いの首都を飛び交う便が増えることで、二国間の関係とビジネスチャンスはさらに深まりそうだ
<取材・文/林泰人 撮影/
Lord of the Wings via flickr (
cc) 写真提供/ポーランド政府観光局>