今まで中東の産油国諸国では埋蔵量の豊富な油田から原油や天然ガスを採掘して売る、その売上をインフラや国民の手厚い福利厚生に使う、という流れが主流でした。
ですが、原油価格の下落や代替エネルギーの浸透などの影響で天然資源だけで国を維持することができなくなる、という未来を危惧するようになってきました。そこで今まで蓄えた資本を活用し、中小企業を育成していく、という形に変わりつつあります。2010年に「アラブ開発基金」が設立されその本部がクウェートに置かれました。これは産油国の国々が出資を行い、中小企業育成を行う横断的な基金でしたが、規模は1600億円程度でした。
ですが、ここ数年の原油価格の下落に合わせて危機感が増したのか、産油国各国で続々と独自の中小企業育成プランが国家主導の元、行われるようになり投資額や計画の規模が数千億円~数兆円まで拡大するようになりました。
例えば代表的な産油国、サウジアラビアではソフトバンクとの先端技術に対する投資ファンドの設立や紅海の巨大な観光地開発、北東部の55兆円規模の巨大な産業都市計画など目立つニュースがたくさんあります。
近年のサウジアラビアが考えていることに中小企業の育成があります。
サウジアラビアは国のGDP全体に占める中小企業の割合は20%程度しかありません。残りの80%は原油などの天然資源からの収入になります。埋蔵量の多い巨大油田を持っているとは言え、他の産油国と比較して5倍から10倍の人口を抱えるサウジアラビアでは原油価格の変動は国家の安定に関わる問題です。
わかりやすく説明しますと、年収が今まで1200万円あり出費が年間1000万円だった家庭が、来年から突然年収400万円になるが出費はそのまま1000万円かかる、再来年の年収もわからないという状況ですと、長期計画を立てにくくなるということをおわかりいただけると思います。
さらに産油国各国では手厚い福利厚生の影響から人口ピラミッドが健全な末広がりのピラミッド型を形成しているので今後続々と就労年齢に達する若者が増え続けることになります。
ですが、今までのような原油や天然ガスの採掘と販売だけでは若年層の雇用を確保できず、じわじわと増えていく失業率増加にも歯止めをかけなければなりません。
サウジアラビアの首都リヤドの街並み