夏野 剛「当たり前のことができないダメ会社はすぐ辞めろ!」vol.4

日本経済が回復の兆しを見せ、企業業績も軒並み好調と報じられる一方、海外では『MADE IN JAPAN』は失落。お家芸であったはずの家電分野も海外メーカーにシェアを奪われている。その理由を、NTTドコモ在籍時にi・modeを立ち上げ、年間1兆7000億円の収入に育て上げた男、夏野剛氏は、“当たり前の経営思考”の欠如と説く。そして、日本企業に多く見られるこの“病”の処方箋は「意外とシンプルだ」とも。成長する企業と衰退する企業の違いは? これからの時代に求められるビジネスマンとは?「ニコニコ動画」を黒字化させた男が、その答えを語り尽くす! ⇒vol.3はこちら

生き残りたければ、当たり前の戦略思想を

夏野剛氏

夏野剛氏

――そう言われれば理解できるのですが、なかなかその考えに至らないことも多いかと……。 夏野:「自分がお客さんならどう思うだろう?」と、思い込みや業界のルール、しきたりを取り払って考えればいいだけです。すると、「ここをこうすればいい」と必ず足りない部分が見えてくる。なかには、その問題を解決するスピードが速い企業がありますが、それは当たり前の戦略思想を理解し実践できている証拠です。今までの「みんなで成長する時代」は終わり、これからは弱肉強食の怖い時代がやってくる。少しでも賢く生き、少しでも人とは違う人生を送ると思った方がいい。

マーケティングやクレームからロクな製品は生まれない

夏野:問題解決といっても、クレームを汲み取る仕組みではなく、付加価値を付けるセンスのことですよ。僕も携帯電話を作っていたからわかりますけど、すべてのクレームに応えていたらロクな製品は作れない。マーケティングやクレームは参考にはしても依存すると、尖りがなく、まったく面白みのない製品になってしまう。iPhone登場以前は、タッチパネルに懐疑的な意見がほとんどでしたが、今はタッチパネルが主流ですよね? マーケティングデータを解析するだけなら、コンピュータで十分です。マーケット全体が伸びていた時代は付加価値を付けなくても生き残れましたが、これからは厳しい。企業の分割や売却なども増えるでしょう。

生き残るためには10年ごとに転職を

夏野:そういう意味では、これからの時代、10年ごとに職を変えたほうが自分に箔が付くと思います。例えば、金融の自由化が始まってIT企業がFXに参入(※)していますが、IT企業では金融機関出身者の需要はあるわけです。特別なスキルを身に付ければ転職もたやすくなります。逆にスキルもない状態で「私はこの道一本で、転職はしません!」と凝り固まった考えを持っている人は、内需縮小の時代では需要がありませんから。 ――ダメ会社を見抜くことは、生き残っていくための智恵であると。 夏野:加えて、複線的思考もできるといい。違う仕事をしたらもっと活躍できるかもしれないと考えるべきなので、「副業のススメ」も提唱したい。会社の収入だけに依存するのは危険ですから、休みの日には自分の好きなことや付加価値があると思うことをして、それを仕事に変えていくのが得策だと思います。 (※)金融の自由化が始まってIT企業がFXに参入 ’07年9月に金融商品取引法が施行され、金融業者以外からのFX事業参入が相次いだ。オンライン取引ができることから、その代表格がサイバーエージェントやカカクコム、DMM.comなどのiT企業であった 【「当たり前戦略」で成功している注目企業】 消費者の立場に立てる企業。その好例として夏野氏が挙げたのは海外メーカーばかりだ。 ・Apple 「どれを買ったらいいの?」と混乱するほど製品ラインナップが多いPC市場で、Appleは「Mac Book Air」または「Mac Book Pro」、それぞれ「11インチ」あるいは「13インチ」などわかりやすい販売戦略を展開 ・レイコップ 突如、ふとんクリーナー市場を席巻した掃除機。爆発的ヒットの理由は、日本の家電メーカーが忘れてしまった「消費者に寄り添った製品開発」に他ならない ・Electrolux エレクトロラックスもラインナップを絞り製品を開発。一方の国内家電メーカーは、ラインナップが大量にあるため、店頭に在庫を置けず当日持ち帰りできないことも…… ・テスラモーターズ 「モデルS」には、これまでの常識を覆す設備が施され、ユーザーをワクワクさせる仕掛けが満載。ダッシュボードに設置されたタッチパネルで、車内の全電気系統の操作が可能 ・ダイソン 「掃除機」という一製品で世界的な企業に成長したダイソン。その原資はイノベーションであり、今もなお消費者に新たな付加価値を提供し続けている。他社製品に迎合した商品を発売することはない ●夏野 剛 著『「当たり前」の戦略思考』(扶桑社刊 1300円+税) 「アマゾンvs楽天」という構図は間違い!? AppleやLINE、ドコモなど有名企業のビジネスを徹底分析。「勝つためのビジネス思考法」をインプットできるビジネスマンのバイブル的一冊 ― 夏野 剛「当たり前のこと」ができないダメ会社はすぐ辞めろ!【4】 ―
「当たり前」の戦略思考

もはや多くの大企業は「当たり前」の戦略すら立てられていない――

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