東芝を海外勢に叩き売ってはいけないたった一つの理由
2018.01.16
衆院選を経て、日経平均は26年ぶりの高値を更新。年初からも高水準を維持している。さらに米国、欧州市場も株価上昇が続いて世界的好景気が到来している。果たして’18年も好循環が続くのか? 闇株新聞氏が注目する経済ニュースから’18年相場を占ってもらった。
’16年に1500億円超の「不適切な会計処理」が明るみになり、歴代3社長が辞任し、原発部門の米ウエスチングハウスで巨額の減損処理をし……階段から転がり落ちるように転落の道をたどった東芝が、ようやく上場廃止を回避する目処をつけました。‘17年11月に米ゴールドマンサックスを主幹事として、第三者割当増資で海外のファンドなどから6000億円もの資金を調達することを明らかにしたのです。これにより、’18年3月期末までに債務超過を解消できる算段がつきました。
日本を代表する企業の上場が維持されることはマーケットにプラスでしょう。しかし、この増資によって疑問が生じているのも事実です。増資で債務超過を解消できるのなら、急いで“虎の子”の半導体事業をハゲタカファンド(ベインキャピタル)らに売却する必要がないからです。東芝は増資を計画した理由を「半導体事業の売却が’18年3月末までに完了しない事態に備えて」と話しているように、半導体事業の売却そのものを見直す構えはありません。「売却ありき」のため、いびつな売却交渉の実態が見えてきています。
売却額2兆円のうち、東芝3505億円、HOYA270億円で議決権の50.1%を保有し、ベインキャピタルの2120億円と韓国・SKハイニックスの3950億円のうちの一部(残りは融資)で議決権の49.9%を保有する計画です。さらに、アップルやデルなどの米国連合が議決権のない優先株を4155億円分引き受け、三井住友ほか国内金融機関の融資6000億円を合わせると2兆円になります。うまくその実態をぼやかしていますが、この半導体事業売却に際して、議決権のある普通株への最大の出資者は売却する立場の東芝となっているのです。もちろん、その発言力は限定的ですが、事実上「東芝が東芝に売る」という構図。これでは利益操作も可能になってしまいます。
本体も虎の子も“ハゲタカ”に売却する東芝の末路……
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◆オリンパス事件と東芝問題を追った新著
’11年に明るみに出た「オリンパス事件」をご記憶だろうか? いち早くその真相を解き明かした闇株新聞氏はその後も、オリンパス経営陣や“指南役”と称された元証券マンらの裁判資料の収集や本人への取材を継続。指南役らの最高裁判決が出るのを待って、かき集めた膨大な資料を整理し、『経済事件のつくり方~オリンパス事件と東芝不正会計問題~』(仮題)と題したノンフィクション作品を出版予定だ。なぜオリンパスは事件化して、東芝は事件化しなかったのか……? 忖度と深謀遠慮が交錯する経済事件の裏側を解き明かす。
オリンパス事件と東芝不正会計問題を追った闇株新聞氏の新著『経済事件のつくり方』(仮題)は’18年発売予定
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