スペースXが開発中の超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ」の想像図 Image Credit: SpaceX
宇宙企業のスペースX、電気自動車のテスラなど、いくつものテック企業を率い、不可能を可能にしてきた実業家のイーロン・マスク氏。SF小説やモンティ・パイソンなどにも造詣が深く、そのウィットに富んだ発言を聞くため、Twitterや講演会には多くのファンが集まる。
そのマスク氏が2017年12月2日、また新たに、そしていろんな意味で物議を醸しそうな発言をTwitterで行った。
スペースXが開発中の超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ」に、テスラの電動スポーツカー「ロードスター」を搭載して宇宙に打ち上げ、カーステからデヴィット・ボウイの『Space Oddity』を流しながら、火星へ向けて飛ばす、というのである。
「事実は小説より奇なり」とはいうが、はたしてこの発言はどこまで本気なのだろうか?
スペースXは2002年に設立され、これまでに大型ロケット「ファルコン9」を開発し、すでに40機以上の打ち上げに成功。さらに、機体を再使用することで打ち上げコストの大幅な低減にも挑んでいる。
また並行して、無人の補給船や有人宇宙船も開発。さらに火星移民に向けた巨大ロケットや宇宙船の開発も行っている。
従業員数は5000人を超え、「働いてみたいテック企業」のようなアンケートでもつねに上位に位置しているなど、名実ともに世界一の宇宙企業と呼ばれる存在にまで成長した。
そのスペースXでは現在、「ファルコン・ヘヴィ」と呼ばれる新しいロケットの開発が大詰めを迎えている。ファルコン・ヘヴィは大型ロケットのファルコン9よりもさらに大きな“超大型ロケット”で、ファルコン9では打ち上げられないような、より大きくて重い衛星や探査機の打ち上げに使うことを目指している。たとえば国際宇宙ステーションが回っているような地球低軌道には約64トン、火星へは約17トンのものを打ち上げることができ、完成すれば世界一強力なロケットになる。
ちなみにファルコン・ヘヴィは完全な新型ロケットというわけではなく、ファルコン9を3機並べたような姿をしており、既存のロケットを束ねてひとつのロケットにするというコンセプトで開発されている。これにより、完全な新規設計と比べ、少ないリスクとコストで超大型ロケットを実現させることができるという狙いがあった。
だが、実際には開発は困難を極めた。たんにファルコン9を3機束ねればいいというのは見た目の話であり、実際には束ねた際の機体の強度や、27基(ファルコン9の3倍)もの数のエンジンの制御をどうするかなどで多くの問題が発生。マスク氏も「これほど大変だとは思わなかった」と漏らすほどだった。
当初、打ち上げは2014年ごろに予定されていたものの、3年以上遅れたいま、ようやく完成が近づき、打ち上げのときを迎えつつある。