ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領 photo by Eneas De Troya via flickr(CC BY 2.0)
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が12月3日、テレビを通して仮想通貨「ペトロ(Petro)」を導入する意向であることを発表した。曰く、「ペトロ」とは、金、石油、天然ガス、ダイヤモンドなどに保証された暗号通貨だそうだ。
自国の資金が尽きてしまう寸前に、いま流行りの仮想通貨を発行しようとしているようだが、正直「ビットコイン」には程遠い。それは計画倒れになることは必至であろう。根本的にベネズエラという国家そのものへの国際的な信頼が存在しないからである。
なにせ、コロンビアは、スタンダードアンドプアーズから(S&P)から「選択的デフォルト(SP)」が宣告されている国である。しかも、IMFからは今年のインフレは720%と予測され、マドゥロ政権下での累積赤字は2000%にまで膨らんでいる国である。
現実に、今年初めに1ドル3000ボリバル(156円)であったのが、現在103000ボリバル(5356円)にまで通貨価値が下落している。ハイパーインフレであるが故に、最近も僅かひと月で対ドル当たり57%までボリバル通貨が下落した。それに応えて、10万ボリバル(5200円)紙幣を発行している。
仮想通貨も相手が存在しての取引に使用されるものだ。しかし、ペトロで商品を購入するにも、まず手持ちのボリバル通貨をペトロに両替せねばならない。ハイパーインフレでボリバル通貨が下落し続ける中で、何を基準にペトロ通貨に両替できるのであろうか。(参照:「
Cambio16」、「
El Pais」)
また、取引が成立するのも相手が存在してのことだ。デフォルトとハイパーインフレの真っただ中にあるベネズエラという国家を誰が信頼するであろうか。皆無であろう。よって、ペトロへの信頼度は生まれないと思われる。
しかも、仮想通貨の魅力は国家や金融機関が関与していないところにある。ペトロの場合は国際的に信頼性を失っているベネズエラ国家が発行するという。誰もそれに魅力は感じないだろう。