少額からコツコツ長期的に積み立てる「草食系投資」のススメ

「草食系投資」という投資のやり方が、じわじわと広がりを見せているという。ガツガツと利益を追い求める「肉食系」の投資とは対極にある投資のことらしい。提唱者の一人であるコモンズ投信会長の渋澤健氏に話を聞いてみた。

長期的視点でコツコツ積み立てていくのが「草食系投資」

渋澤健

草食投資隊“隊長”の渋澤健氏。渋澤栄一の玄孫にあたる

「草食系投資」とは、私とセゾン投信の中野晴啓さん、レオス・キャピタル・ワークス(ひふみ投信)の藤野英人さんの3人で結成した「草食投資隊」が提唱する長期投資のコンセプトです。定額かつ少額でも始められ、勝つか負けるかの一発勝負ではない、じっくりと腰を据えた、でも、楽ちんな長期信託投資のことを指します。  私たち3人は競合他社なのですが、お互いの縄張りを食い荒らすような“競争”型ではなく、お互いフォローし合うような“共創”型の投資というのが必要ではないかという話で意気投合しました。その話をしたのはリーマンショック(2008年)の翌年です。投資が冷え込んだ時期に、「長期的な視点でコツコツと積み立てていくような投資を広めていこう」ということで3人で活動を開始、日本全国を巡ってセミナーを開催しています。

若手・現役世代こそ少額からの草食系投資を

草食投資隊セミナー

草食投資隊によるセミナーで「草食的投資」を勧める渋澤健氏(右端)

 現在、多くの証券会社や銀行は、潤沢な運用資産を持っている60歳以上の年代をメインターゲットに営業をかけています。しかし未来のことを考えたら、私は若手、現役世代こそ資産形成を意識してほしいと思っています。毎月1~3万円くらいの少額から始めてコツコツ増やしていくような投資をすることで、将来がずいぶん変わってくるからです。  草食投資隊が活動を開始した2010~2012年ごろに積立投資を開始した人たちは、今ホクホクしていますよ。その間、3.11などさまざまな下落要素もあったのですが、安定した実績を挙げているからです。  定額制の積立投資だから、それが可能になります。つまり、価格が下がると口数を増やし、上がると口数を減らします。それを淡々と繰り返していけば、安い時に買いだめをし、長期的には“宝箱”ができているという算段です。  相場が上がり続けるのであれば、一括で買いを入れてもいいかもしれません。しかし、どの辺で相場が反転するのかなどのリスクも考えると、これからの相場の行方が分からない時こそ積立投資が役に立ちます。  来年から、積立NISAが始まります。前から株をやっている人からすると、年間40万円の税制優遇は少ないと考えるかもしれません。ですが、毎月3万3333円を積み上げれば年間40万円、それを20年積み上げると800万円の元本になります。 将来の成果は約束できないのが投資ですが、倍増している可能性もあります。それで税金がかからないのですから、将来に漠然たる不安を感じる若手世代の積立NISAはこれから必須だと思います。
次のページ
お金よりも「時間」に投資を
1
2
丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~

コスタリカが中米という不安定な地域で軍隊を持たずにやってこられたのはなぜなのか?「理想」ではなく「現実」のもとに非武装を選択した丸腰国家コスタリカの実像に迫る。

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会