金正男氏殺害の際に北朝鮮スパイの拠点とされたジャカルタの北レスに行ってみた

中野鷹

平壌レストランの看板やエアコンの室外機が撤去されている店舗跡

 東南アジアでの北朝鮮レストラン(以下北レス)の閉店ラッシュが続いているが、インドネシアの首都ジャカルタにあった「平壌レストラン」も今年3月に姿を消していた。この北レスは2月の金正男氏殺害事件直後にジャカルタ警察が北朝鮮スパイの活動拠点に利用されていると名指しされたことで他の北レスとは違った意味で注目を集めた場所だ。

 2月末に行われたジャカルタ警察の発表によると、レストラン2階のスタッフ向けの一室が金正男氏殺害事件の実行犯たちへの指示役の男らが出入りするなど事実上のアジトだと断定されている。また、シンガポールメディア『AsiaOne』は、過去20年に渡り北朝鮮諜報機関がインドネシアで活動していた実態を伝えるなどこのレストランを中心に北がスパイ活動を展開してきた事実が明らかになっていた。

 11月上旬、ジャカルタ取材した際に、この「平壌レストラン」の現在を見るべく、現地に赴いてみることにした。

 かつて同レストランのものだった電話番号に電話してみると、やはり閉店しているようで呼び出し音は鳴るが誰も出ない。平壌レストランがあるのは、ジャカルタ中心部から東へ10キロメートルほどのクラパ・ガディンにある。渋滞の酷さで有名なジャカルタなので朝晩を避けてもタクシーで片道1時間ほどかかってしまったが、場所は幹線路に面しており見つけやすく、すぐにわかった。周辺には中華料理店が多く集まっている。

 ピンク色の外壁に三角屋根の建物の前に立つと赤に白文字の「Pyongyang Restaurant」の看板が外され、看板があった空間の鉄板がむき出しになっていた。

入口をふさぐように停められているバイク

 入口前には勝手にバイクが停められており、店内は営業当時からあった白いレースとテープの目張りで見づらいが、中を覗くと入口左の会計カウンターを残しきれいさっぱり何もない状態であることが確認できる。

すでに何もなくガラーンとした店内

2階の奥には鉄の扉があった……

 ジャカルタで取材をしていると平壌レストランの常連だったという日本人駐在員H氏と出会うことができ話を聞くことができた。

 H氏によるとジャカルタには2016年まで北レスが2店あったが、1店は昨年閉店して平壌レストランだけになったそうだ。店内の大まかな構造は、1階がテーブル席、2階はカラオケができる個室があり、入口から直進すると2階への階段があり、店内から2階へ行けるようになっていたという。

「仕事柄、アセアン諸国や中国へも出張するので各地の北レスへも行くのですが、平壌レストランの女性たちはマナーもしっかりしており、他国の北レスのコたちよりもフレンドリーでよかったですよ。私はよく2階の個室でカラオケを歌っていたのですが、2階の奥に鉄の扉があり、その先には従業員用の部屋でもあるのかなと思っていました。あと、レストランなのに食事もしないスーツ姿の北朝鮮人男性がよく出入りしていたので何をしているのかと思ったものでした」(H氏)

 ジャカルタが特殊なのか北朝鮮本国の監視が緩いのか定かではないが、店の固定電話の他に北レススタッフの女性たちも個別の携帯電話を所持しており、なんとH氏は電話番号を交換していたというのだから驚きだ。しかし、3月上旬には、その携帯にかけてもつながらなくなり、SMS(ショートメール)も送れなくなったという。どうやら、金正男氏殺害事件から1か月もしない、ジャカルタ警察がスパイのアジトだと名指しされてから1週間ほどの3か月上旬にはひっそりと閉店したと見られ、この辺は日本でも報じられた通りのようだ。

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インドネシア人の北朝鮮への関心は?

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