丹東高麗館閉店とほぼ同時期の今月上旬、中国国家旅遊局(観光局)が丹東の旅行会社に対して8日から中国人向けの北朝鮮ツアーの販売を停止するように通達を出した。対象は、3日以上のツアーで、日帰りや1泊2日で行くような丹東対岸の新義州や東北部の羅先へのツアーは対象外となるも、来年の春節(旧正月)前には同じく停止になる見込みだ。
日帰りツアーの中国人向け施設も完成から2年ほどで閑古鳥に
外国人が観光として平壌へ行く場合、出国手続きに2営業日かかるので、最短でも2泊3日ツアーとなり事実上平壌へは行けなくなった。
また、いくら中国でも停止や禁止通達をするときには名目上であっても理由を示すのであるが、今回は理由を示さず、有効期限も無期限となっている。今年で言えば、3月の韓国ツアー全面禁止はTHAAD配備への抗議、報復を理由に挙げ、10月以降の日本ツアー販売制限は、年間訪日許可数の上限を超えたというよく分からないものの理由を挙げていたのであるが、今回は今のところ示していない。
丹東の旅行会社の間では、先ごろ訪中したトランプ大統領への手土産だろうと噂になっており、国連制裁への履行アピールの1つだと見られる。
丹東の複数の旅行会社へ確認したところ、「今年は日帰りツアーも含めて訪朝する中国人は少ないので影響は限定的だ」と話す。
現時点では、北朝鮮ツアー販売停止通達は、丹東のみに出されており、瀋陽や大連などの周辺都市には出されていないようだが、瀋陽の旅行会社の代表は、すでに止めたと話す。
「瀋陽には通達は来ていないのですが、旅遊局の通達は中央政府の意向でもあるので、自主規制で販売を取り止めました。あと、横のつながりが強い旅行業界の仕組み的に仮に瀋陽でツアーを受け付けても業務提携している丹東の旅行会社へ委託する会社も多いので瀋陽や他都市でも受付ができない状態になっています」
丹東駅と新義州とを結ぶバスのターミナルも開業が無期限延期に(黄色い建物)
中央政府の意向を意識しての自主規制は、日本で今年流行したいわゆる「忖度」に従ったものと言えそうだ。
本当に丹東高麗館は復活することなくこのまま消滅してしまう運命なのであろうか。
<取材・文/中野鷹(TwitterID=
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