「病気で休職しても、今のキャリアを手放したくない」外資コンサル女子の本音<産業医に聞け!>

職場以外の自分の居場所を見つけましょう

 さて本題に戻ります。もれなくダブりなくとれる選択肢を全て検討し、最良の代替え案を3つお答えさせていただきます。  1つめの案です。職場以外の自分の居場所を見つけましょう、作りましょう。そのために趣味を作りましょう。  元来Aさんは、とてもエネルギッシュな方です。この8年間、そのエネルギーを全て仕事に集中し、職業人としての自己成長し、その後も学んだ知識を実践で活かすことにより、先輩としても仕事の面白みを感じることもできたと思います。  しかし、そろそろ、そのような状態にも慣れ、次のステップを求めているのではないでしょうか。自分なりの新たな刺激を必要としているのかもしれません。転職や留学、あるいはプライベートの充実(婚活や妊活)に目を向ける人もたくさんいる時期です。  Aさんのプライベートがどのような状況かわかりませんが、産業医として感じることは、仕事以外にも自分の世界が構築できていないとヤバい(危ない)頃だということです。  具体的には仕事を忘れることができるくらい没頭できる趣味を持ちましょう。その趣味の仲間や居場所は、きっとAさんにとって居心地のいい空間になるはずです。そこにいる時間は、仕事のことも忘れてしまうようになるでしょう。  趣味の上達は達成感という形で自己成長を、趣味を介しての友人関係は仕事とは異なる価値観を与えてくれます。ぜひ、会社以外にも自分の趣味、居場所、仲間を見つけてください。

仕事をやめ、世界に旅に出てはいかがでしょう

 2つめの案です。仕事をやめ、世界に旅に出てはいかがでしょうか。  Aさんは8年間たくさん働き、たくさん学んできました。周囲の期待以上の成長をご自身も感じてきたと思います。  しかし現在、やむことのない周囲の期待に応えきれない自分がいます。その期待応えられない自分を認めることができない気持ちが、不安の原因となり、ますます自分を他人と比べてしまっているような気がします。  もちろん、こんな気分の時に他人と自分を比べれば、実際の評価とは関係なく、他人の方が優れて見える、自分が劣っていると考えてしまうものです。  転職することにより新たな学びや成長を得られる可能性もわかっていますが、今の会社以上にハクのある会社は同業にはなく、周囲に「もしかしてキャリアダウン?」と思われることをAさんは受け入れられないのではないかと察します。  家と会社の往復ばかりの8年間で、価値観がかなり偏ってしまったのではと危惧します。そしてその価値観こそが自分を苦しめてもいるのです。  だからこそ、偏ってしまった価値観を一度リセットしてみてはいかがでしょうか。  世界にはさまざまな人間がいて、さまざまな価値観があること。自分の名刺は今の環境から出ればなんの役にも立たないこと。一度、現在の“位職住”環境を飛び出して見ると、たくさん学ぶことができると思います。(位職住=名刺の肩書き等のステータス、職種や会社名、住んでいる地域など。造語です)  実際に私は、円形脱毛症になってしまったハイスペック女子が仕事をやめ、憧れのフランスに渡り、現在充実した人生を送っている例や、東南アジアに飛び出してより生き生き活動している方々を知っています。  Aさんは会社人間として30歳までに学ぶべきことはしっかり学んできたと思います。今は人として学ぶべきことがあることに気づいてほしいと思います。そして新たな価値観を持てば、きっと今の悩みも簡単に超えることができる気がしてなりません。  Aさんの性格からすると、帰国後の計画を立てずに出発はできないかもしれません。しかし、その計画を待っていたら、一歩も前には進めません。Aさんの未来の旦那さんを世界に見つけに行くくらいの思い切りの良さで、後先、考えず会社を抜けて、日本から飛び立ってしまいましょう。きっとどうにかなります。だってAさんはハイスペックだから。

まだまだ休職すべきレベルではない

 最後になりますが、ご質問にあった休職について。  今のAさんは、きっとまだまだ休職すべきレベルではありません。自信を失っているのは確かですが、病的なレベルほどまでの医学的懸念すべき症状があるわけではなさそうです。  Aさんにとって、このような状況は人生で初めてかもしれませんね。自分の力が及ばないことに直面し、ちょっとうろたえているのも事実でしょう。しかし、安易に休職することは復職という新たなハードルを作るだけです。  Aさんは単に、現実から逃げたいだけです。そのときに「病気」であることを利用したいのかもしれません。しかし同時に、周囲に自分が病気であるとは本当には思われたくないので休職期間中もしっかり活動する日々を過ごしキャリアにプラスにしたいと感じてしまうタイプです。  おそらくAさんの性格では、休職した途端、復職したらどんな顔をして出社したらいいのかと不安に悩まされたり、同僚になんて挨拶しようなどなど考えたり、場合によっては休むことは怠けることなのでそれを受け入れられずにこの機会に新たな資格を勉強しようなどと計画立てたりするでしょう。  断言します。今のAさんに休職は向きません。ますますその価値観や特徴が強化される気がしてしまいます。  それよりも、人生初の壁に当たっているという現状を受け入れてみてはいかがでしょうか。辛いかもしれませんが、今の自分を受け入れるという経験こそが、きっとAさんのいい経験になると思います。 人は話すことにより、漠然と自分の中にあった価値観や考えに気づくこともあるといいます。産業医の私でよければ、来月も話を聞かせてください。
武神健之氏

武神健之氏

 以上、ご相談どうもありがとうございました。  私の答えを元に色々考えることができるよう、あえて刺激的に書いている部分もありますが、ご了承ください。読者の皆様からも、産業医に相談したいこと、募集しています。相談事項がある方は、ハーバー・ビジネス・オンラインのお問い合わせフォームからお願いします。 <TEXT/武神健之> 【武神健之】 たけがみ けんじ◯医学博士、産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書―上司のための「みる・きく・はなす」技術 』(きずな出版)、『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある
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